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みちさん、ありがとう。(特注の現代仏壇)ーその1 [現代仏壇]

 

001、チェリー材の鉋がけ.jpg

 ブラックチェリーを鉋がけしています。

002、ブラックチェリーの杢.jpg

 右端の方に濃淡がみえますでしょう?ここは全て木目が波打っている、つまり順目と逆目が交互になっているところ。こういう場所を難なく鉋をかけられるようになるまでに20年以上かかりました。うまく削れるとその瞬間だけは何もかにも忘れて無心になれる作業です。自分でも不思議なんですけどね。自らの手で研いだ刃物がザラザラだった材料の表面をキラキラの木味に仕上げてゆく。それが何度やっても飽きることのない作業なんですね、、、。

 

 

 さて、みなさん、ほんとにお久しぶりでした!ご無沙汰してしまい、ひそかにご心配いただいていた方にはすみません。

 kuniは元気でやってましたよ。いろんなことがありましてね。追々許されることは記事にしてゆきますが、まぁ一つは経営難です。長引く不況にジリジリと追い詰められまして、夏がそのピークでした。なんとしてもその危機を乗り切ろうと、このブログでの小物の販売やら、若い時に集めた大工道具の名品を処分したり、長期の出稼ぎに出たり、、、。人の優しさに助けられながらどうにか墜落寸前からわずかに上昇、相変わらずの低空飛行ながらとにもかくにも墜落だけはまぬがれました。

 そんな厳しい状況の中、ソネブロのみちさんからメールをいただきました。「実家で小さなお仏壇を買おうかという話が出て、そんなことならkuniさんに作ってもらいましょう」という話になったのだそうです。嬉しかった、、、鼻水出ました、、、。ははは。

 出稼ぎに出るタイミングだったのと、その後も急ぎの仕事やらでずっとお待たせして、年始からやっと取り掛かったのでした。

 

 

 003、ブラックチェリーの現代仏壇.JPG

 小ぶりでシンプルなお仏壇です。以前にも作った形を踏襲していて、45度の面取りとつまみも45度傾けてコーディネートということですね。扉は前スペースに余裕がないということで4枚折戸のご要望。一つ目の見所はつまみ。やりますよ、kuniらしいことをね!フフフ。

004、特注の現代仏壇.JPG

 戸を開くとスライドのサブ天板に引き出し。この引き出しの口板が見所の二つ目です。

005、イチイ材のオブジェ.jpg

 これは5年ほど前に作ったイチイ材のオブジェ。イチイの木ってかなり細かいピッチで枝がありますから、45センチの長さに無欠点の材ってなかなか取れないものなんです。この作品はそれが出来たし、出てきた木目も最高のものでした。これを引き出しの口板に使ってしまおうと思ったのです。

 本体は旭川で調達したブラックチェリー。100枚はあろうかという在庫の中から選びに選んだ最高の3枚。

006、ブラックチェリー全部.jpg

 中央の板が巾35センチもある立派な板、ここから本体全てが取れます。左の板から扉と棚板。右の板からは背板を取ります。1枚の板から本体すべての部品が取れるというのは木目の雰囲気を合わせるには最高です。

007、ブラックチェリー、白太.jpg

 ただ、端には白太が絡んでいてこれは好みが分かれるところですから、みちさんに写真を送って快諾を得ました。ブラックチェリーは焼け色がすごく濃くなるタイプの木でしてね。

008、シュウリザクラ.JPG

 これはシュウリザクラなんですけど、焼け方はそっくりで白太と赤身の差は3年もするとこんな美しいコントラストになります。

 

009、4枚の折戸.jpg

 本体を木取りして、4枚折戸の木取りをし荒削りをしてみると中から樹液貯まり(ガムスポット)が出て来てしまいました。

010、ブラックチェリーのガムスポット.jpg

 これはブラックチェリーの最大の特徴なんですね。これがあるからブラックチェリーだと解るくらいですから、適度であれば木味のひとつなんですが、あまり大きく入るのはさすがに美しくはない、、、。

011、扉の予備.jpg

 最後の残りでもうひと組木取りしてみました。おおきな欠点はないので先ほどの2枚をこれと入れ替えて木目がうまく合うところで組み合わせます。

012、戸の杢合わせ.jpg

 まずまず、揃いの板のように見えるところまで来ました。ひと安心です。

013、背板の杢.jpg

 これは背板の組合わせ。実は今回、最初のうち合板構造で考えていたのですが、みちさんの「無垢はむりでしょうか?」の一言があり、万が一狂って調子が悪くなった時は運賃を持っていただけるなら修理は無償で、という条件付きで無垢で作ることにしたのでした。

 この背板は3枚合わせると約40センチあります。これを1枚で作ると、冬場は2ミリは縮むし反りも大きい。でもこうして3枚に分割すれば一枚あたりが縮む量は約0.7ミリですし反りも3分の1で済みます。

014、背板の雇ざね.jpg

 だから、こうして一枚ずつが自由に動ける工夫をしてやります。無垢のフローリングと同じですね。

 

015、挽き板のプレス.jpg

 さてこれはスライドのサブ天板です。シャクリのところにスライドレールが付くのですが、ランバコアの断面が見えますか?これが合板構造と言っていたやり方です。まずランバコアの端に無垢の角材を接着してランバと平面に削り出す。その後、表裏に2.5ミリに削り出した無垢材を接着する。そうすると表面は完全に無垢なのにまったく伸び縮みのない板が出来上がるわけです。最初はこの方法で全てを作ろうと思ったのです。これは無垢よりも手間のかかる超高級仕様なんですけど、作り手じゃないと理解しにくい手法ですね。

 このサブ天板だけは金物との関係で伸び縮が許されないのでこの構造にしたのです。

 

016、隠し丁番ー1.jpg

 ここに隠し丁番が仕込んであります。表、裏どちらからも見えない、開いた時にしか丁番は見えません。

017、隠し丁番ー2.jpg

 ほらね。で、この金物の彫り込みは、

018、隠し丁番ー3.jpg

 こんな2段の長円の彫り込みで、この左右に許される誤差は0.1ミリほど。これが16箇所もあるしびれる加工、、、。

 

019、ダボ組み.jpg

 側板と地板、天板もダボ7本ずつのこれもまた0.1ミリ精度の穴加工、、、。

020、お仏壇の組立.jpg

 やっと組み立てて、

021、折戸.jpg

 扉を仮に吊ってみます。というのは、家具用のマグネットって小さなものでも直径10ミリはありますから、こういう小ぶりなモノには大きすぎて見栄えが悪い。なので代わりに5ミリのネオジウム磁石と超低頭ビスを使うことにしたのですが、これの効き具合は勘がたより、、、。

022、折戸にマグネットー1.jpg

 この扉の裏の超低頭ビスを、

023、折戸にマグネットー2.jpg

 この5ミリのネオジが引き付ける。やってみるとちょうどいい感じでした。さて、安心して可動棚を切って合わせてみると、

024、棚板.jpg

 ひえー!!!!!前のダボ位置が違う!!!

 ショックでしたねぇ、、、。しばし落ち込み、みちさんに電話しました。

 「あのー、、、棚板の奥行10ミリ深くしていいかなぁ、、、。」

 「大丈夫だと思います。」

 「すみませ~ん」

 

 

 

 さて、kuniマジックですよ。つまみです。

025、タガヤサンのつまみー1.jpg

 材料置き場からゴソゴソとタガヤサンの端材を出してきました。まず、対角線に年輪が平行になるように20ミリ角を切り出します。この時頭の中で「どうしてこういうアホなことやるかな?」とつぶやいてます(笑)

026、タガヤサンのつまみー2.jpg

 切り出しました。なぜこういうことをしたのかと言うと、

027、タガヤサンのつまみー3.jpg

 ここに小さく渦を巻いたような場所があるでしょう?ここをつまみやすいようにしゃくると、

028、タガヤサンのつまみー4.jpg

 ウシシ~でしょう!?

 

 

029、現代仏壇の木地仕上げ.jpg

 さあ、木地の状態での完成です!扉を開けると、

030、特注の現代仏壇.jpg

 口板も付きました。

 この状態で2階の事務所に1週間置いて狂いがでたら、少し削ったりしてから塗装しようと思います。今、この記事を書いている時点で3日経っていますが大丈夫そうなので、行けるでしょう。

 その2で塗装後の完成をアップしたいと思います。

 

 

 

 

 いやー、久しぶりの記事でした。この半年ほどブログがほとんど出来なかったのは舟弘さんという鍛冶屋さんの新作鉋の開発の手伝いをしているというのがもう一つの大きな理由です。これも後日記事にしたいと思いますけど。

 ぼちぼちな更新になりそうですが、遅ればせながら、今年もよろしくお付き合い下さい。

 

 


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みちさん、ありがとう。(特注の現代仏壇)ーその2 [現代仏壇]

 

 当ブログ初の食の話題、「タガヤサンのブリーチ漬け」!?

031、タガヤサンの漂白.jpg

 こんなもの食べたら死んじゃうよ(^_^;)。器はみちさん作。その結果は最後の方で。

 

032、塗装の研磨.jpg

 ウレタンのガン吹きで、下塗り3回、クリア3回を塗って、通常の家具ならこれで上等の仕上がりなんですけど、さらに研磨してます。(普通じゃない、、、(^_^;))

 最後に特殊なワックスをかけるのですけど、ガン吹きってどうしても肌がミクロの単位ではゆず肌になるのと、木の加工をする場所と同じ建物の中に塗装する場所があるとどうしても木のホコリがいっしょに固まってしまうのね。だから最後に研磨してワックスをかけると、面精度が上がってカチっとしたハリが出て、かつスべスベに仕上がるんです。でもね、とにかく手間がかかって大変。

033、最後のワックスがけ.jpg

 ワックスをかけて、

034、金物の微調整.jpg

 最後の組立。レールや丁番を何度も調整して最良の状態にします。

 

035、特注の現代仏ー1壇.jpg

 完成です。特注の現代仏壇、(H600、W460、D340)ブラックチェリー

 エ?オネダン、、、30かなぁ、、、。

 

036、特注の現代仏ー2.jpg

 右の側板のたけのこ杢。

037、特注の現代仏ー3.jpg

 左の杢。両方ともたけのこ杢で揃えて。

038、特注の現代仏ー4.jpg

 天板は白太絡みにキラッキラ。

  扉を開けると、、、

 

 

039、特注の現代仏ー5.jpg

 芯持ち教授!?あはは。

 

040、ブラックチェリーの髄線.jpg

 丁番の付いてる面は髄線がバリバリ。この丁番、見えても様になっているのがお気に入りです。ただね、加工と取り付け精度がハンパない、、、。

 

041、イチイの引き出し.jpg

 スライド天板と引き出し。引き出しの細部は、

 

042、イチイの木目.jpg

 仰天の木目。

 

028、タガヤサンのつまみー4.jpg

 そして生の色はこんなだったタガヤサンはブリーチによる漂白で

 

043、タガヤサンの漂白効果.jpg

 バッチリ!

 このつまみだけで、一個にだぶん5千円くらいの手間がかかっていると思います。ブリーチした後、何度も水に晒さないと成分が残ってしまうと塗料が黄変するんです。水に晒した後、ストーブの上に吊るして一日乾燥させてやっと塗装でしょう?ものすごい手間。でもそれだけの美しさがあるよね。

 

 ご予算の倍の手間を投入したお仏壇でした。首吊りたいくらい苦しい時に注文してくれて、ほんとうに嬉しかったですからねぇ、、、。その精一杯のお返しです。100点満点じゃないけれど、いいものができたと思います。

 

 みちさん、ありがとう!

 

 

 


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ナラ突き板の現代仏壇ーシンプルで芳醇 [現代仏壇]


 お久しぶりです、僕は元気でやっておりました。夏場は大工さんのアルバイト、9月からはたまってしまった自分の仕事に集中しています。今日やっと納めた仕事ですが老人ホームの居室用の現代仏壇です。

001、ナラ突き板の現代仏壇.jpg
 Tさんの宗派は戒名の軸を飾るのだそうで、奥行きは少なめでシンプルに、でも僕らしい事をというご要望です。

 扉を閉じた状態は簡潔に、でも開くと扉の裏の彫り込みに6個のレリーフと棚板が木目彩色という芳醇な世界がという設定です。

 今回は無垢材にはこだわらないご様子だったので、突き板ベニアを使った合板構造にしました。箱物に関しては無垢にこだわらない方がいいと僕は思っています。ただ今回の合板はただの合板ではありませんよ。

 002、シルキーオークの突き板.jpg

 突き板の貼り方を説明するために、これはシルキーオークの突き板です。


003、追い貼り.jpg

 4枚の突き板を右左同じ向きに並べて貼ってゆくのを「追い貼り」といいます。現代はほとんどがこの追い貼りです。あっさりしていることと、部材を取る時の歩留まりがいいのが大きな理由です。


004、ブック貼り.jpg

 これは一枚おきに左右を反転させて並べた状態。接ぎ口を中心軸として木目が反転するので「ブック貼り」といいます。現代ではめったに見ない貼り方です。大きな面積でこれをすると見方によっては、くどいということと歩留まりが悪いのが理由だと思います。


005、ブック貼りのナラ突き板.jpg

 でも今回は物が小さいのでこのブック貼りにしました。写真は4枚の突き板が貼られているんですが、髄線の斜めのパターンが対象形になってV字を描いているのが解るでしょうか?こういう効果が得られるのがブックならでは、なのです。

006、ナラの突き板.jpg

 すべてのパーツをブック貼りで特注しました。



007、ランバコアの断面.jpg

 さて、これはランバコアの断面です。ファルカタというとても軽い芯材の両面にベニアを接着したような断面です。突き板仕事というのはこのランバコアの表面に

008、ランバコアに突き板ベニア.jpg

 2.5ミリ厚の突き板を貼ったベニアを貼付けて行って、まるで全体がナラの無垢材でできているかのような状態にすることですが、この断面を考えるとファルカタを芯として表裏2枚ずつ、合計4枚のベニアが使われることになります。厳密に言えばランバコア表層のベニア2層は無駄なことになるわけです。


009、桐集成材に突き板ベニア.jpg

 そこで今回は桐の集成材を自分で納得するまで削り直して、その表面にナラを貼ったベニアを接着することにしました。というのは既成のランバコアは平面精度があまり良くなくて、大きな家具を作る分には気にならないのですけど、今回のように物が小さくて精度が要求される場面だと気になるのですね。

 加えてランバに突き板ベニアを貼るという方法ですとどうしても無駄な層が無駄な厚みになってしまうので、薄くて繊細でかつ精度が高いという次元を醸し出しにくいのです。

010、桐芯材のランバコア.jpg

 そこで今回は桐を芯材とした自家製ランバという仕様にしたのでした。



011、ワンバイ材.jpg

 本体が組み終わってほっとして、次はレリーフのパーツの加工ですが、今回はなかなかいい材料が見つからず、2件目のホームセンターでようやく出逢えました。2枚だけ、今回のパーツにはこれしかないだろうという材料です。

 写真の左の材が特によく写っていますが、年輪が細かくてくっきりしています。これに出逢うために数百枚はひっくり返しました。

012、アテの木目.jpg

 端の方で実験です。

013、杢.jpg

 わずか25ミリ角の中に見事な木目が出ましたよ!

014、杢.jpg

 安心して本番の加工。

015、木目お万華鏡.jpg

 快心の木目です。

016、木目.jpg

 この木目が尖ったところを狙って彫り込むと、

017、木目の不思議.jpg

 これも狙い通り!

018、立体木目いろいろ.jpg

 でもね、このパターンは20回やり直しました、、、。そうしてようやく今日納品。





019、ホーム居室のお仏壇.jpg

 偶然ですが、先に用意してあった無印の家具もナラ材でまったく違和感がなく、


020、シンプルなお仏壇.jpg
021、木目彩色.jpg


 カーテンの色と合わせた彩色の棚板もちゃんとコーディネート出来ました。


022、ナラ材のつまみ.jpg

 ナラ材で作ったつまみもさりげなくおしゃれ。


023、木のレリーフ.jpg

 ブックマッチの突き板とレリーフの納まりです。
 
 快心のパーツを見てくれますか?

024、木のレリーフパーツ.jpg

 20個作り直した成果ですよ。

025、木のレリーフパーツ.jpg

 これはあっさり決まったね。

026、木のレリーフパーツ.jpg

 たった25ミリ角の中にこれだけの木目が出る材がよくも見つかったものです。

027、木のレリーフパーツ.jpg

 見事に楕円。

028、木のレリーフパーツ.jpg

 この不規則な木目がいい味出してます。

 最後はこれ、

029、木のレリーフパーツ.jpg

 やったね!



 身内の健康問題で集中力を欠き、本体も扉も作り直したというギョエー!!!な制作でしたけど、最後は納得の完成度にこぎ着けました。お客さんの幸せそうなお顔に癒された日でした。

 Tさん、何もかも信頼して任せていただいて嬉しかったです。ありがとうございました!





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