シナランバのTV収納棚の製作ー完成 (オーダメイドの収納) [シナランバのTV収納棚と木のアート]
今年の春のこと、後輩が僕の1年の時の4年だったSさんという先輩を連れて来てくれました。個展をする時の作品を裏打ちするパネルを作って、それに張って欲しいというご要望でした。Sさんとは在学中はまったく接点はなく、存じ上げなかったのですが、その時の対応にいたく感激されたようで、後日、親友のOさんを(この方もまた先輩でありながら存じ上げなかったのですが)連れて来てくれました。
Oさんは、TV収納で悩んでいらっしゃったのですが、まだ先のことで、既製品もお考えのようでしたし、その時はおおよその予算だけをお伝えしたのでした。
11月になってそのOさんからお電話で「お願いしたい」とのこと。ほとんど忘れていたので、びっくりしながらその日のうちに伺ったのです。
これがOさんのリビング。
TVを買い換えるのを機に収納もちゃんとしたいということで、言われてみると、ここのリビングには収納がまったくなく、今置いてあるTV収納の左端から右の植物のあたりまで、天井までの収納がほしいということでした。
ただ、圧迫感があるのはいやなので、できるだけ背景の壁に馴染むように作ってほしいと。
写真は広角で写しているせいかあまり感じないのですが、実際ソファに座って想像すると確かにここに天井までの収納は威圧的かと、思える状況です。色々とご要望をお聞きして、週に一度のペースで3回の打ち合わせの後やっとすべてが決まりました。
仕様はシナのランバコアに半透明の白。予算は50万
色は右の二枚の中間の色に。このサンプルに至るまで、20枚は作ったかなぁ、、、。半透明の白ってムラになりやすくて、技術的にすごく難しいのですよ。
違います!?yanasannさん?
今回は「とにかく壁に馴染むように」ということで、僕としては職人に徹して、いい仕事をとにかくして色気(笑)は出さないと決めていました。
ところが、、、!
すべてが決まってほっとしたら、Oさんが、「国本さんて立体的な作品はつくらないのですか?」と。その説明を聞いていると、この収納にどうやらkuniらしさがほしいようで、、、。
あれ!?今回はkuniを出さないことに徹しようと思っていたら、、、?
で、参考までにJUNKOさんの本棚の棚板に付けたレリーフのお話をすると
「それいいですね!」と。
ありゃりゃ!?
「あのね、国本さんてステキなものを作っているのに、こんなただの収納を頼むのもなぁと思って、国本さんらしさがどこかにほしいなぁと思っていたんです。」と。
「国本さんが作ってくれたものを眺めながら生きてゆきたいのよ」
え!?
この瞬間、鼻の奥がツーンと!
あ、やば!
「その言葉、ブログにいただきです~」とか言って、ごまかしたけど、もう心はウルウルのkuniだったのです、、、。だってねぇ、リーマンショックまではかつかつだけどどうにかやっていけてました。ところが今、何もかもがメチャクチャ。世の中が「腕のいい職人なんていらん!」って言ってるみたいな状況でしょう?仕事を依頼してくださるだけでも有難いのに、こんな嬉しいことを言ってくださるなんて、、、!
あ~、また鼻がツーンとして来た、、、。
Oさんには、後日、白状したのでした。「あの時、涙が出そうだったのです、、、出会えたこと、幸せに思います。」って、、、。
あ、ステキなものってご存知ない方のために、紹介しましょうね。
これは、札幌にある北星学園の中学、高校のスミス寮のホールにあるレリーフです。「森のおくりもの」というタイトルで、中央の細部は、
こんな風になってます。白い材は何のことはないツーバイ材で、茶色の材がタモという、建築においては広葉樹の中で一番ポピュラーな材ですね。
もうひとつ、同じ学園の校舎には、
創立120周年の記念として、古い木造校舎の梁材を再利用したレリーフで、「環」というタイトルです。
内側の緑のリングを地球とするなら、外側は地球上のあらゆる物質、生き物。或いはすべての人の「輪」というイメージです。
え!?アーティストみたいって!?あら、知らんかったの~?そうなんですよ~だ!
(これらの作品の解説はカテゴリーの木のレリーフにありますので、よかったらご覧下さい。)
決定図です。
間口約2.7メートル、高さ約2.5メートル。上台の左端には梁が食い込んでくるのでここの納まりはちょっとやっかい、、、。
デザインとしては間口を約6等分にして、オープン棚の分割を1:2:3とリズムを作ったところが特徴でしょうか。
全体は7分割になってましてね。
解りやすいように色分けすると、こんな風に上台2個、3,4がオープン棚、下台が5,6,7の3個になってます。ここはマンションの3階なのでこういう風に小さめに分割しないとエレベーターに入らなくなってしまうのです。
こういう収納家具を作る時の盲点が搬入経路なんですね~。設計と製作が違う人間だと時々あるんですよ。どこからも入らなくて、持って帰って切断!?とか。(笑)
さて、3.4のオープン棚の空間は追加予算5万の範囲のおまかせで 「kuniらしいことをやって下さい」という、モノつくり魂に火がついちゃう!ご要望ですよ!
はい、レリーフいきます!
この日の帰り道、kuniの頭はフル回転!運転しながら「あ!!!それだ!!!」って。
本棚の時とはちょっと違うよ~。
びくっくりするぞ~!ウシシ、、、、、、、。
工房に着いたら頭がオーバーヒートしちゃって、へろへろでしたとさ!
さて、製作に入りました!まずオープン棚の地板は物を頻繁に出し入れして飾って楽しむでしょうから、一番、角が痛みやすいので、ここだけは無垢の3ミリの面材を付けます。
接着剤を塗って、
仮締めしたら、はみ出た分を洗い落として、
上からも、クランプで圧着。2枚の板にたった3ミリの無垢材を圧着するだけで、約一時間かかってます。無垢の面材をくっつける仕様ってほんと贅沢なのです。
小鉋でくるくるの削りくず~♪
パネルソーで切ってゆくのですが、本体だけでもパーツの数は35枚あって、いろんな場所に要注意事項がありますんで、
もんもんと考え、チェックしながら切ってゆきます。
箱の別に置き場所を変えたら、もうどこに何を置いたのやら、、、状態でして、、、。
寸法のカットが終わったら、一枚ずつ木目と反りを見て、勝手を決めて、背中のベニアの溝と棚ダボのアルミのレールの溝を突いてゆきます。
この時定盤の上に
こんな小さなゴミが落ちていて、それに気付かずに材を置いて溝を突いてしまうとひどい傷になってしまうので、こういうゴミはいちいち吹き飛ばしての作業なんですよ。
シナランバの表と裏って大抵は木目が違います。
この面はシナとしては木目がはっきりしているけど、この裏は
写真じゃわからないほどオトナシイ木目。上の木目で統一できればそれはそれで面白いけど、この木目が出ているのはごく一部。だから今回はこっちのオトナシイ木目を表の見えるところにします。
溝加工の終わった、35枚、このコバすべてに0.6ミリの厚突き(スライスした単板)を張り、配線、コンセントの穴、などまだまだ細かい作業は山のようにあります!
手前のコバに文字が書いてあるでしょう?
これだけ部品があるとこうして書いておかないと訳わかんなくなっちゃうんです!一枚一枚、木目と反りを見て、上下、前後を決めているんですよ。太鼓状に中間が膨らんだ箱同士はぴったり組めないけど、中間が凹んだ鼓状ならぴったりくっつく理屈です。
儲けたかったら、そんな手間は省略すればいいのですけどね。kuniはノミの心臓なもんで。お客さんに「ここ隙間が空いてるのはどうして?」なんて言われたら、心臓止まっちゃいますからね!(笑)
ひゃー
先は長いぞー!
「TV収納棚の製作ーその1 (シナランバコアだって美しい!)」
うにゅにゅにゅにゅ、、、、。
って、何が始まった!?って?
よし!
何なの~?
ウシシ、、、。元ネタはこれさ~!鳥かごの網~。
だから何なの!?
こういうことです!ピクチャーレールとフック。
オープン棚のところは、「小さい絵も飾れるようにしたい」というご要望がありましてね。でも既製品のレールはごっつくて、目立ってしょうがないだろうから、自作したのですよ。
最初はステンの細い棒と思ったのですけど、燃えないゴミの中に、秋に特注の鳥かごを作った時の柵を見つけたので、「あ!これだ!」と思いましてね。たぶんこれ、亜鉛が混ぜてあるからさびにくいし、曲げやすいしちょうどよかった!リサイクル~♪
さて、寸法の決め終わったランバに0.6ミリの厚単板(あつたんぱん)を貼ってゆきます。
コバと単板の裏にゴムのりを吹き付けて、指触乾燥まできたら、
ペタッと貼って、その後、木のへらで、
しこしこ、しこしこ、と圧着します。そして余分は、
なんのことはない、カッターでシュッ、シュッっと切ったり、
「単板落とし君」で一気に切ったりします。
これ、バラして見ると、
使い古しの目立てヤスリの再利用。よく見ると、刃が三箇所付いているでしょう?中央が一番高くて、深く入る、両側の二箇所はちょっと低くしてあって、単板の厚み程度にしか食い込まない深さになっているんです。切り落とす時に、一枚の刃で無理に切り分けようとすると、逆目のところで、ささくれてしまうのが2段階の刃の切り込みだと、ささくれにくいというわけね。
オープン棚にはオーディオや照明も使うかもしれないので、側板にはコンセントのプラグを通す穴を空けておきます。でも目立たないように、ちゃんとキャップを使います。
ね?きれいな納まりでしょう?
ぎゃー!
失敗、、、。この板は取り直し、、、、。
ここはTVの収納部。中央の木のブロックをTVとすると、紫のテープがチューナーへの経路。
実際に電源の配線具合は、こういうことに、
右下の大きな穴から巾木の空間に出て、そこからずーーーっと、壁のコンセントまで延びてゆくことになります。
電源のからむ家具って一気に面倒になるんですよね。気を使うところのひとつです。
はて、今日のところはここまで。
今日は組み立ての様子から、
長い部材が天板と地板で奥の左から側板、仕切り板、右の側板で、まず左の側板から、
のり(接着剤のことを職人はめんどくさいので「のり」って言います。)を塗って、ガリガリと木ねじでもみ上げます。
次は仕切り板。
で、次は右の側と来て、
背板のベニアを落とし込んだら、上の木口にまたのりを塗って、
よっと、天板を載せて、またガリガリ、ガリガリ、、、。
で今度は伏せて、
対角の寸法を測って、正確な90度が出たら、
ベニアの入角にUタッカーを打って、90度の状態を仮固定します。
Uタッカーってね、釘の強度を持ったホッチキスって感じですね。
で、この入角ののりを塗ってそこに補強の9ミリベニアを
今度はピンタッカーっていう一本針で固定してゆきます。
こうして箱の90度はしっかり出るわけです。それと、この箱を壁に固定する際にこの9ミリで補強した範囲でもみつければ、壁にしっかりと固定できるわけです。
さて、すべての箱が組みあがりましたので、箱同士を現場の状況と同じに仮組みしていきますよ~。
一番下の下駄はレーザーで水平を出してあります。その上に積み上げて、、、。
あれ!?上台を載せる隙間がない!?
あちゃー!!!
下駄を使わないで積まないと梁の下に納まらない寸法でしたとさ!?
あ~あ、1時間はロスしたね、、、。
いやー、でっかいなぁ、、、。まだいっぱい仕事があるなぁ、、、。
さて今度は扉の段取りです!
これは扉のフラッシュ(心材の表面にベニアをプレスした、中が中空の構造)の芯に使うLVLという材料でして、laminated veneer lumber の略ですね。ジェルトンというわりに素直な材の丸太をかつらむきにした単板を積層にしたもので、いろんな向きに動きたがる層が枚数が重なることで相殺されて、安定した性質になっているものです。
扉の心材って、プレスすれば見えなくなってしまうから、予算の厳しい仕事とか、儲けようとか思えばランバの切れ端を使うのですね、、、(けっこうそういう家具屋さんは多い)でもね、下の写真を見ると、
左がランバで右がLVLです。ランバは2,4メーターで4ミリは反っていて、LVLは同じ長さで1ミリ以下。LVLで作る方が絶対精度は高いのです。
ランバに使っている中芯のファルカタっていう材は軽いのにものすごく狂いやすい材なんです。それをタダですむからって使うと扉がねじれたり、反ったりするのですよ。だから僕はまず使わない。
心材を並べて、
Uタッカーで組んで、この空間には、
ベニアがへこまないように、例えば、こういうロールコアっていうものを入れたりするのですが、これの扱いがけっこう難しい面がありましてね。上のブロック状のものから正確な厚みに切り出すのが紙なのでなかなか精度が出しにくいのです。
で、今回初めての試みなんですけど、表面に貼るベニアの切り落としを心材の厚みの16.5ミリの巾に裂いて、格子状のコアにすることにしました。
これは真面目にエコ。
これを相欠きにして、
心材の空間にはめると、
これが芯か!?って感じですね?
これにのりを塗って、ベニアをかぶせて、プレスの繰り返しで、
今日はおしまい~。
さて、格子状のコアを入れた扉の精度は上々のようでした。ゆがみはまったく見えません。ホッとして丁番の穴を掘ってゆきます。
40Φ(ファイ=直径)の穴。
このスライド丁番には35Φと40Φの2種類があるのですが、40の方が当然丈夫なので、いつもこっちを使います。値段も当然高いのですが、長持ちする方がいいですからね、、、。
上台は使用頻度が低いので2個にしますが、
下台はよく使うでしょうから3個に。上が2個にしているのは、上の方がぶら下がりの荷重を受けるので、こっちの方が痛みやすいからです。40Φの丁番でしかも3個ですから、長持ちしますよ~。
だからお前は貧乏するのさ~。
引き出しにはCD,DVDが3列入ります。一列ずつ空間が空くようにスペーサーの捧も用意しました。こうすれば、ケースをつまみやすいですよね。これは置いてあるだけなので、取り外せます。
引き手は三日月型でOさんのご希望。実はOさん、持病をお持ちで握力が普通の人の半分しかないそうで、指が3本かけられるようにとのことでした。
レールはフルオープンの3段引きの高級品!2段引きのレールは引き出しの奥の方まで出てこないのですが、3段の場合は全部出て来るので使いやすいのです。その代わり、このレールのお値段は2段引きの3倍!
だからお前は、うるさい!ちゅうの!
引き出しの前板は桐の箱の内側から木ねじで引っ張って固定してあります。
そのねじが右2箇所に見えていますが、この木ねじの頭はちゃんと座刳をして沈めてあります。それから、左の今、座刳をしている穴は引き手を止めるビスの穴。
こうして頭を沈めてやらないとDVDのケースにキズが付いてしまいますからね~。
今回悩んだのがここの納まり。
Oさんはそのご病気のせいで、TVを見るときの頭の傾きにも制約があって少し見下げるくらいがいいのだそうです。だからTVを置く天板の高さは低めの設定なんです。そうするとチューナーとDVDの収納スペースがけっこうギリギリでしてね。加えて、チューナーのスペースは埃がはいらないようにガラスを使ってほしいということもあったのです。他のデザインと違和感のないガラス扉はやっぱり框状にしたいけど、チューナーの受光部は下から10ミリの位置。だから框はうんと細くなくちゃいけない、、、。
そんなこんなでここの納まりを考えるのはけっこう時間がかかりました。ちなみにこの框の太さは25ミリしかありませんのよ!ホソ!!!
なんやかんやで、扉、引き出しは全部付きましたよ!
これはいい家具になる予感がします!kuniの名作になりますよ~。なんでってね。シナのランバをそのまま仕上がりとするのはこういう気合の入った特注家具ではちょっとイレギュラーなんです。
シナランバをそのまま使うっていうのはどちらかと言うと、食品庫の棚とか下駄箱とか、裏方のようなケースの仕様なんですね。
でも僕はそうは思わない。シナはね、パステル調の色付けをするとグンとよくなるのです!でもなぜかそれをやる人って見たことないのですね、、、。
で、今回のお話はこれをする絶好の機会だったのです。「壁のオフホワイトに馴染むように」っていうのは、まさにシナの得意技なんだと僕は思っているのです。
塗装で大失敗でもしない限り、この完成は美しいですよ~!ただね、写真に撮るのはたぶん、すごく難しい、、、。
うう~。
おお!ここからはついに「kuniらしいこと」に突入だ!さてどんな記事の書き方にしましょうかね!?チラ見せでちょっと引っ張るかな!?(笑)
続きをお楽しみに~!
「TV収納棚の製作ーその4 (特注のTV収納棚)」
今日は狂ったように働きました。運送事件で予定が遅れていたことに今日気付いたのです。Oさんに納期を二日遅らせていただけないかメールをし、無理な場合にそなえて倍のスピードで働きました。(くたびれた~)
夜になってOKとのお返事が。ややや、一安心と、短めの記事にすることにします。
出してきたのは、トドマツの角材。車の修理でお世話になったところに転がっていたものです。除雪の時のスロープに使っていたものだけど、もう必要ないんだというので「もらっていいですか!?」と。(笑)
釘穴を避ければ、立派な木材~♪
また出して来たのは、左からラワン、タモの埋もれ木(土中に50年以上埋まっていたもので、イオウや鉄分などが入り込んで独特の色に変化したもの)と、右の2枚はノーザーンシルキーオーク(オーストラリア産)の人工着色突き板。
シルキーオークの斑(ふ)がすごいでしょう!?木材の中で一番髄線が大きいのではないでしょうか?
これを先ほどの角材の一面に貼って、
???何をしたいのかって!?まぁまぁ。
凸凹があんまりひどいので、鉋をかけて、
半球状のえぐりを掘って、、、。このえぐりの表面、ひどい削り肌でしょう!?材質がひどく柔らかいので繊維が折れてしまうのね。ほんとは木口じゃなくて側面に彫る予定だったのだけど、作っているうちにこの方がいいと計画変更したんです。
「いやーこれ仕上げるの大変!」
しょうがないので、ノミで繊維の折れたところまで削って、
仕上げには半球形にペーパーを貼ったもので、
クルクルクルっと!っていうか、ずいぶん時間かかっていたんですけどね。だって、一箇所仕上げるのに10センチ角のペーパー一枚使うのですもん!
気持は「早く早く!」って思っているのに、作業の性質は地味ーな、、、。
「間に合うのか!?」とかって時に、「何やってるんだおれ!?」って感じです。
ふ~。きれいだね~。
ペーパーがかかった状態だから粉っぽい色ですけど、クリアを塗ったらきれいですよ~。
???でしょう!?
はい、バラシマショウネ。
こういうことですのよ!
オープン棚は遊び心満点のスペースです。背板の上にピクチャーレールがまずあるでしょう?
そして側板に3列のダボ穴が空いているのは、下の段の奥行きの広い棚と上の狭い棚をお好みで配置できる工夫です。
で、下の棚板は!2枚構造になっていて、ここには薄い薄い引き出しが入るのです。もちろん口板はお得意の立体木目のレリーフでこれから加工します。
2枚構造で一枚の厚みは12ミリしかないのね。だから棚の上にたくさん物を乗せると重さでたわんでしまうので、この角材は支柱でもあるんです。でもはずしてディスプレイにも使えるブロックにもなる!今はベースのトドマツの面を正面に向けているけど、厚単板を貼った面を正面に向けると!
ほらね!木口のえぐりは木の実とかアクセサリーとか小さなものをかわいく演出するためのもの。
Oさん、退職後はのんびり生活を楽しみたいでしょうから、こうして演出を楽しむ「仕掛け」を作ってあげたかったのです!
狭い、広いの棚板とこのディススプレイブロックの組み合わせは無限にありますからね。飽きることなく、楽しめると思いますよ。
例えば、こんなことも、
あるいは、こんなことも!
あー、楽しい!(笑)
今日はこれにて、お し ま い 。
さて、それにしても製作に集中しないといけません。記事が書けるかどうか不明です。ご訪問もできないかもしれませんがどうか、ご勘弁のほど。
この5日ほど、狂ったように働きました。(もともと?)本当は、今日が納品、設置の日だったのですが、なんと昨日、車で移動中にエンジンが止まり、レッカー移動!
今日になってどうやらエンジンがダメみたい!?えらいショックです。運送事件が解決に向け、、、と思っていたら、今度は車?
「神様、オレ何悪い事したのさ~???」って、、、。kuniの人生、どこまでも苦労が尽きませんねぇ、、、。
という訳で、納品は年明けに変更していただきまして、工房での完成までを記事にしようと思います。
オープン棚の可動引き出しの口板に使う、レリーフを取るワンバイ材です。いわゆるツーバイ材の半分の厚みで18ミリ。巾は85ミリで長さ1.8メーターでご覧の通り195円。安いでしょう!?ホームセンターに行くたびにそのコーナーをちらちらと見てはい木目のものを見つけると、買って来ては貯めてあったものです。数年前に気が付いたことなんですけど、このワンバイ材はかなり細い丸太から取っているようなんです。細い丸太ということは、成長が遅かった丸太であることが多く、写真の木口を見ても年輪のピッチは1ミリ前後しかないでしょう?そういう個体で年輪がはっきりしていて、節と節の間が長いものは、僕が作りたいレリーフの材にうってつけなわけです。
ただ後ろに見えている様に、節の間隔はおおよそ30センチ前後。今回のレリーフ状口板は45センチほどはいるので、20枚の在庫から10パーツも取れればいいところ。
なのに初っ端から4回やり直して、やっと一番手前の物で納得しました。もうほとんど取り直す材料の予備はありませんよ、、、。
ほら年輪がくっきりしてるでしょう!?これが、化けますよ!
ね!?中央一箇所にヤニつぼが出て来ちゃったけど、固まっているのでよしとします。だってこれ以上の材料はもうないんですもの。
先丸の刃物で材料を前後にスライドさせて、ひとピッチずつずらして削ってます。ここにも小さな節があるけど、これも愛嬌ですね。
円筒の硬いスポンジにサンドペーパーを貼ったもので一箇所ずつ仕上げてゆきます。地味~でしょう?
そんなこんなで6パーツどうにか加工できました。
引き出しに口板を取り付けます。この引き出しの深さは、たった15ミリ!「何入れるの!?」って感じですけど、それを考えるのもお楽しみですね~。一応A4は入る設定です。
引き出しの後ろが角のように出っ張っているでしょう?これは中身を全部引き出しても、落ちない工夫。
ユニットに入った状態を見上げるとこんな風に口板の裏に指をかけられるようにしました。
さて、棚板の説明をちょっとしましょうか?
これは棚板の裏側。ダボのしゃくりがありますね?ここを拡大して見ると。
刃物で削った時の毛羽が出ていますでしょう?
これ僕はもちろん取るのですけど、取らない仕事って、世の中には多々存在するんです。というのは、この棚板、約40センチ角ほどですが、これに単価を付けるなら、大雑把に言うと500円ほどにしかなりません。毛羽とかバリとか取って、手間をかけちゃうと自分の首を絞めちゃうのです。
物の値段ってどんどん下がって、職人の手間賃も下がる一方。だからどんどんこなさないと食べていけません。かすかな罪悪感を感じながらもその手間を省いていかなくちゃいけない状況なんですね。人によってはそれが当たり前だと思っている。
例えばコバに厚単板を貼る。それひとつとっても、手間のかけ方ってあるんですよ。
これは手間を省いたやり方ですけど、コバにゴムのりを塗ったら、裏が粘着のシナのテープというのがありまして、これをペタっと貼ったら、
テープカッターでシュッと取って、おしまい!これで終わりです。この場合、毛羽は立ってイガイガしてるし、角も立っているわけです。でもそんなのおかまいなし。だって「安いから仕方ない」って。
で、僕はどうやっているかというと、
テープは使わず、厚単板とランバのコバの両面にゴムのりを塗って、ペタン。カッターで耳を落としたら、面鉋を使って、丸面を取り。
その後、さらにペーパーで滑らかにして行きますが、
この板、一枚のすべての角を数えると、表裏の4辺、と角4箇所で合計12箇所。このすべてにペーパーをかけます。(手間をかけない仕事ではすべてにかけないのですよ)その違い。
(安手の作りつけ家具の棚板の角を指でこすってみれば、もしやすると毛羽が刺さるか、切れるかもしれません。)
こうやって、角もかけておくと、貼った単板がめくれにくいわけです。
さらに平面もサンダーをかけ、
コバにもサンダーをかける。
こうしてその質感は少しずつ高まっていくわけです。
棚板33枚、仕上げるのに半日かかりました。まったくやらなくても気が付かない、評価されないかもしれないことに半日費やしてるんです。
だからいつまでも貧乏なのね~。食費は一食200円以内、病院もがまんして、奥歯が欠けても歯医者はいけない、、。
あ~、神様、ボーナス頂戴!
バカって言えばバカですよね。
この間ね、cjlewisさんの記事に好きな言葉を見つけちゃったんですねぇ。
「 あいの わざは ちいさく ても よろこび なさる かみさま 」
自分のしてることそのものだなぁ、、、って思っちゃった、、、。
でも車は、、、。神様???
さて、塗装の説明をちょっとだけしましょうか?
この写真の左はシナランバの素地(無塗装)で、右はクリアを塗ったものです。
そして次の写真が、今回の半透明のオフホワイト。
写真だとものすごく微妙なんですけど。この2枚の写真を比べると、シナという材はクリアで仕上げるとかわいそうだけどつまらない、、、。他のもっと高い木と勝負できないのです。
ところが、この半透明のパステル調の場合は違うのです。まず、素地に顔料で着色材を塗り、ウェスで拭き取ります。すると年輪の硬めのところの顔料はあまり沁みていないので拭き取れてしまうのですが、柔らかいところに刺さった顔料は拭き取れずに残る、この色の差が面白い表情を出すのです。ただこの拭き取りの作業でムラも出やすいのでさらにこの上に白をわずかに混ぜたクリアを吹き付けて、ムラをけしてゆくのです。そうすると、木目の微妙な濃淡の残るパステル調の上品な仕上がりにんるんです。これがシナでこそ出来る表情なのですね。
これが塗る前の素地の状態。これを一旦ばらばらにして、塗装しもう一度くみ上げて完成したのが次の写真です。
ね、ナチュラルメイクですごく上品になった感じがしませんか!?
巾木の上に乗せると梁につかえちゃうので置いてませんが、これが工房での完成です!
塗りの工程はまったく写真が撮れませんでした。三日半で50時間塗装にかかって、もう気が狂いそうでしたね、、、。毎度、予算をはるかに超える仕事をしてしまう、おバカです。
扉の部分の説明もしましょう。
丁番は3個ないし2個の内の一個にバネ付きで30度ほどまで閉めれば後は手を離しても閉まる丁番を使っています。閉まりきる時に、本体に当たる音がバン!といやなので、この出っ張りはダンパーなんです。この取り付け位置がなかなか微妙でしてね。何度も最適な位置を試して決めました。これ最後はスーっと閉まっていいのですよ!
ほらこうして押すとスーと引っ込む。
これは上台の扉の耐震ラッチというもので、地震の時だけ、扉にロックがかかる金物なんです。
さぁ、メインのオープン棚は、、、
一番手前の空間にはミニコンポが置かれます。なので、今回の引き出しの口板のレリーフを決める際に「音」のイメージで並びを考えました。ドーンと一音から始まって、奥に行くに従いクレッシェンドで盛り上がっていくような感じですね。
ドーーン。
オシロスコープのひと波みたいに、、、。
揺らめいて、
波打って、
激しく、
波立って、
また穏やかに終わって行くような、、、。
支柱であり、ディスプレイブロックでもある、その塗りあがりはやっぱりきれいでしょう!?
今回のTV収納棚は、Oさんの癒しを中心に考えてゆきました。いろんな癒しがあると思うけど、今回はなぜか「楽しいこと」が自然に浮かんで来たのです。だから今回の棚の作品名は、
「 楽 」
引き出しの裏にばっちり、マジックで書いちゃった!
例によってまた大幅赤字、60万の仕事をしてしまいました。あ~あ。でも
「あいの わざは ちいさく ても よろこび なさる かみさま」
だから、きっといつかこの苦労が大きく報われる日を信じましょうねぇ。
さて、年内の記事はこれにて終了かもしれません。今年もまた、激動の年でした。一匹で食べてゆくことの宿命ですね、、、。皆さんにコメントのお返しが出来なくて、失礼したこともしばしばだったと思います。ごめんなさい。でもこれが精一杯。
そして、みなさんの暖かさが、激動の支えでもありました。ご訪問いただいたすべての方に御礼申し上げます。ありがとうございました!また来年もよろしくお願いいたします!どうぞよいお年をお迎え下さいね。
みんな~!
Hug!!!
さて、1月8日の土曜日はやっと納品の日でした。このところ雪の日が続き、工房周辺の積雪は6~70センチほどでしょうか。この日は朝の6時から除雪機を出して除雪。
それから、道具を用意したり現場に必要な段取りをしたりして、8時半からトラックに積み込み、10時半に出発。ところが1キロも走らないところで応援に来てもらった友人の車がコケタ!!!?「ウォーターポンプがはずれました!」ですって!?
あちゃー!二度も車のトラブルなんて人生初!
予定を一時間遅れて、現地に1時に到着。3人で一時間かかって、3階に上げ、そこから一人の作業。これが全然終わらなくて、この日は夜の8時でとりあえず打ち切り、次の日も午後一時から作業をさせていただき、取り付けに合計10時間かかった計算です!?予想の倍はかかっちゃいました!
設置前と
設置後。
次の日、Oさんからメールをいただきました。
「 隅々まで、丁寧に丁寧に制作して頂き、まさに探しあててたテレビボードが現実に出来上がって感動で眺めては癒やされています。
まず全ての色は今の壁紙と全く同じで、塗装を何回も試して頂いた結果だと思います。おかげさまで、天井まであってもなんの圧迫感がありません。色は感覚なので、この色と伝えてもなかなか伝わらないものですが、アーティストの国本さんには微妙な色合いまで安心して、お任せできました。
また取っ手は柔らかい曲線で楽に引き出せ、尚且つ美しい幅と長さ、アイボリーの棚にゴールドですが、金が目立ち過ぎず、棚全体に上品なアクセントを感じます。
部屋は断然明るくなりました。収納は今までの2倍以上、しかも棚板をたくさんつくって頂いたので、色々なサイズが収納できて助かります。
特筆すべきは飾り棚です。国本さんのアートが私の心を優しくしてくれます。これから、飾りつけが楽しみです。小物や硝子、小さな絵など如何様にもかざり付けられるので季節やクリスマスなど模様替えが楽しみです。
棚には奥行きがちがったり、引き出しの前面は6つとも表情が異なり、優しい温かみのあるテクスチュアで、またこの引き出しの棚高さが動かせばまた視点の高さ、光の当たり方で雰囲気が変わります。夜は照明によってまた微妙に表情を変えていきます。また支柱にもなるブロックは積み木遊び的に組み合わせ方で色々な表情や風情を見せてくれます。
また、絵を掛けるにも金属のレールではないので、絵を掛けてなくても、目立たず、どこまでも木の温かみを感じます。
何ヶ月も家具を見て納得いかなかったものが、今欲しかった全ての希望が叶い、今、目の前にあるというのは、今回夫とも良かったねと感謝しています!
アーティストの国本さんにこの家具に情熱的に制作して頂き、また2日間丁寧に取り付けて頂き、その制作を目の前にして制作に妥協を許さないという国本さんのアーティスト魂を見せて頂きました。また、驚いたのは、詳しいことを伝えてなかったのに、まるで以心伝心のごとく、全てこうしたいなと考えていたのがブログを見ながら表れてくるのに、驚いていました!
私の親友も今制作待ちです。アーティストの国本さんの作品に魅せられ、また彼女自身も国本さんの素敵な色合いの家具も見てたからです。私は最初、国本さんのアートに魅せられて逆に家具なんて、とてもお願いできないと思ってしまいました!今は、さらにファンになりました!お人柄も作品そのものの温かい優しさ溢れ、それで自分の世界には妥協を許さない、素晴らしいです。大感謝です。また機会があったら…と考えています! 」
実はOさん、連載中にとてもつらい出来事があって、でもこの連載があって、楽しみ、癒されていたそうなのです。ブログってこんな役にたつこともあるんですね。
久しぶりに手強い仕事でしたけど、終わってその充実感もまた大きな仕事でもありました。kuniの傑作がまたひとつ生まれましたね。
さてOさんと共に生きてこの「楽」はどんな人生を歩むのか?いつかまた会いにゆきたいと思います。