木口寄木の時計「つむぎ」ー胸いっぱいの、、、 [寄木の時計]
お久しぶりです。不景気の波にもまれ崖っぷちの厳しい状態が続いています。ブログを書くゆとりもなくて皆さんには失礼しています。今日の記事は感謝を込めて、どうしても書きたかったのです。
旧ブログでしかお見せ出来ていなかった木口寄木の時計 「つむぎ」
これは、カラマツにオレンジシャーベットの着色。
カラマツにピンクの着色。
これはトドマツにミントブルーの着色。
同じトドマツにピンク
今や、輸入禁止のレッドウッドに紫の着色、
そして、ウォールナットのクリア。
この製作を記事にしたのは3年前だったでしょうか?この時、このウォールナットを気に入って、「もしまた材料が手に入ったらぜひ製作してほしい」とおっしゃったのは、青い鳥さんでした。
白太のからんだウォールナットは、白太だけを買えるわけではなく、ウォールナットの仕事があった時にその端材をとっておいて有効利用できるという条件がなくてはできないことなのです。ところがこの不景気でそういう仕事がまったくなくなってしまい、ウォールナットの白太が手に入ることはそのあと一年以上ありませんでした。
しばらくして、旭川に材料の買出しに行ってようやく手に入れ、事務所の梁の上で2年乾燥させてやっと製作することにしたのです。
これがその角材。この木口寄木の時計はものすごい神経を使う仕事でしてね。おまけにこういう小物に属する仕事は本当はある程度まとまった数を作らないと採算が取れないという事情もあるんです。フォトフレームとか、マグネットとか、みんなそうなんですね。僕の仕事のスタイルがなお更そうさせている面があるんですけどね。
僕の仕事って機械を駆使してものすごく精度を出すタイプの仕事でしょう?だから機械のセッティングにすごい時間がかかる。たったひとつの作品に各工程の機械のセッティングの手間賃を乗せるたとすると、、、。そうねぇ、、、例えばL判のフォトフレームを一枚だけ作るとすると、その単価は例えば2万になってしまう、というようなことです。それって、「ひぇ~」ですよね?だから3年もお待たせしてしまったわけです。
え?注文の数がまとまったのか?って?いえ、予定していた仕事がなくなって手が空いてしまっただけのこと(^_^;)。そんなわけで、青い鳥さんの時計ともうひとつ、誰かのために作ろうか、ということにしたのでした。
さて、上の角材、ぐにゃりと曲がってますねぇ。白太の部分は細胞が若いので収縮が激しく、こんなことになります。木口切りにした結果がある程度同じような形になるためにはなるべく真っ直ぐなところを選ばなくてはいけません。一台の時計に使う長さは30センチもあれば足りる計算ですけど、ここに1.2メートルの角材が2本あっても目が真っ直ぐなところは極わずか。30センチ一台分を4本も取れれば御の字です。
真っ直ぐなところを4本切りました。使えるところはこれですべて。後はマキですね。この時点で半分はゴミになったということです。(^_^;)
正確な断面に削り出して2.5ミリの厚みにスライスしてゆきます。
これ、全部スライスされているんですよ。
ほらね。
これを木目が対象になるようにひっくり返しながら並べてゆきます。
手前の菱形はあんまり美しくないです。
で、奥の方は
うん、ここはきれい。
あれこれと入れ替えて納得のパターンA。
2本目の角材は赤味と白太の形が不規則でかつ白太が黒ずんでいる。というのは白太は栄養が豊富なので菌に冒されやすく乾燥途中で変色しやすいのですよ。で、これを菱形っぽく並べてみると、、、
うーん、ぜんぜんダメですね。ならば、風車のようにと、並べた結果は、
うしし、バッチリですね。これはパターンB。
パターンCは、整いすぎてちょっと面白味に欠ける。何か上手い手はないかと考えてみると、
パターンBの余りとパターンCを並べて見ると、白黒の面積が反転していることに気が付き、「これだ!」
BとCを混ぜる事に!ふふふ、決まったね!
4本目、パターンDは悪くはないけど4万のお値段を付ける価値までには至らない、、、。ゴメン、君はなしだなぁ、、、。最後に残った者に意志を託して下さい、、、。
さて、これは3年前の前回、いつかまた作るときのためにと多めに作った目盛り。200個くらいはありますけど、、、。
今回は壁掛けではなく、置き時計という注文で、当然小さくなるので、盤面とのバランスを考えると大きすぎて使えませんでした。(^_^;)
結局、丸棒の目盛りに変更です。
目盛りと中心の穴を開け、
文字盤と目盛りも塗装して、
針のサイズも合わないのでニッパで切り詰めで先を丸く成型し直して、仕上げも気に入らないのでヘアーラインをかけて、、、
どうじゃ!?
うんうん、美しいのぉ~。これが青い鳥さんの「つむぎ」置き時計!
白黒反転の効果がいい味出してますねぇ。
台座。この台座と文字盤の止め方を考えるのに1年悩みました。(アホですね、、、)
もう一台。これも決まりましたね。
白太が菌に侵されて変色した黒ずみも、間違いなく面白味になっています。
目盛りのタガヤサンの木目の向きが放射状になっていることに気が付いた方はいないでしょうね?
5日間かけて結局、4万の時計を2台。もちろん採算割れ。仕事がキャンセルになってゼロよりはもちろんめでたし。それがモノを作って生きる者の定めです。
この木口寄木の時計シリーズに「つむぎ」と名付けた意味は、、、いろんな気持ちが込められているのです。
青い鳥さんはソネットで高額作品を初めての購入いただいた方でした。そもそもそこから物語は「つむがれて」いたんです。他人とは思えないような信頼と応援をして下さるその人は間違いなく、僕の支えのひとつと言えます。そしてその気持ちに答えるために材料にデザインに最善を尽くす。デザインという言葉が飽和状態にさえなりつつある現代に対する、せめてもの僕の提案でもあるのです。
ストーリーを大事にするデザインがあってもいいのではないか?と。
そして、ふたつ目の時計は埼玉のAさんが購入してくれました。この5月はまたしても車が壊れて大ピンチだったのです。ホント、胃が壊れてしまうか?というくらい具合が悪かったのですよ、、、。
青い鳥さんとAさんに5月危機は救われました。6月もとってもまずい状況なんですけどね(^_^;)。とりあえず5月危機はおふたりのおかげで乗り越えられるし、あんまり更新しないと本気で心配されちゃいますしね。ええ、なんとか生きてはいます。
でもって、またしばらくゴメンナサイなkuniとなるでしょう。(^_^;)
ほんと、すんません。こんなブログにコメントくださる方はほんと感謝します。ありがとう!