木のペンスタンド「ふたつの幸せ、届けます」 [ペンスタンド]
売り上げの一部を復興支援にと思い、マグネットをアウトレットで出した時、Dandelionさんが、金魚を2匹、購入してくれました。その時のメールに、前からkuniの作品が欲しいと思っていたので、嬉しい、ということに加えて、職場のデスクに置く、「魂のこもったペンスタンドが欲しい」と!
びっくりしましたねぇ、、、。嬉しかったのですけど、ただ、この時は、ペンスタンドに何万も考えるわけはないのだから、お断りしなくちゃいけないだろうなぁ、、、と。で、一応、予算を尋ねてみると、なんと!1.5~2万まではOKですと!まさかの返事にさらにびっくり、そして引き受けることにしたのでした、、、。
時間が空いた時に、まず一回目の試作をしてみたのがこの形。
5個のパーツが作る空間にペンを、という発想だったのですが、パーツ同士をどうやって固定するか?どうしたらもっと美しくなるか?に相当の時間がかかると思えてこの方向は断念。
そしてまったく違う方向性で、製作を始めました。
厚さ30ミリ、巾85ミリ、長さ110ミリの板2枚の内側をバンドソーでえぐり、底板と仕切り捧。これが基本パーツです。
これを圧着し、
ジョイントの補強として、ウォールナットの角材を4本入れて、アウトラインを切り出します。
補強の角材を意匠としたわけですね。
またしてもいきなり完成ですけど、
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実はね、今回6個作り始めたのですけど、半分の3個は失敗しちゃいました!設計にちょっと無理がありましてね。バンドソーの誤差の考えが甘かったのです。それは後から説明するとして、、、。
底板にはコルクを貼ってペン先が痛まないように。それと3ミリの仕切り捧は、ペンの本数が少ない時に、斜めにだらしがなく傾くのを防ぐためです。
それと、内側はバンドソーの切りっぱなし。単価を抑えるためと、外側のつるっとした仕上がりとバンドソーの目の対比がまた面白く、よくよく観察するとバンドソーのゆれによって、木目も揺れているのがわかります。そこも面白味のひとつ。
今回、Dandelionさんに見せたかった要素はふたつあります。ひとつは木が目の前で育って行く楽しさ。
このふたつはシュリザクラと言って、桜の一種です。シュリとはアイヌ語で「硬くて、乾いても狂わない木」を意味するのだそうで、アイヌの人達はこの木で槍の柄を作ったのだとか。現代では油絵のパレットやイーゼルに使われているのですけど、資源が枯渇しつつあり、めったに手に入らなくなりました。
いったん乾けば、狂いにくいという点ともうひとつの最大の特徴は「焼け色」。写真をよく見ると、上と下で色がわずかに違うでしょう?上が表皮に近かった若い細胞で「白太」、下が成熟した細胞の「赤味」で、条件によるのですが、2~3年をかけて、次の写真のように焼けてゆくのです。
これは、今回の失敗作を石灰を溶いた強アルカリの液に15分ほど浸けて反応させた色。自然に焼けた色はもっと上品です。この変化が数年かけてじわじわと目の前で起こるわけで、それはまるで育ってゆくような感覚です。これがまず、届けたかったことのひとつ。
もうひとつは「日常に潜む幸せ」とでも言えるかな?これは建築廃材でツーバイ材。いつでもどこでも買える材ですね。その中のパインという樹種なのですけど、
木口側から見ると、木の中心側が貼り合わせてあります。だから正面に見えるのは木の外側(木表)の木目。
そして、今度は、
木の表側が貼り合わせてあるので、さっきとは逆に表に見えるのは、木の中心側(木裏)の木目。
ね、まったく違うでしょう?一枚の板から、木取りの方法によってこんなに違う木目を引き出すことができるのです。
ただしね、この個体、
底板の溝が出て来て、失敗作。w~
バンドソーって細い帯の鋸ですから、材の中で切っている最中にたわみが出る。これは下の方で0.5ミリくらい鉛筆の線より内側に切れてしまったのですね、、、。だからそこをサンダーがけをしたら溝が出てきてしまったというわけ。もうちょっと板厚を厚めに設計すればよかったのですね、、、。まだまだ隙があります。
さてパイン材にはヤニが多く含まれています。撮影に使っていた白熱球にかざすと
木目がこんなに透けて見えます!親指の透けた色とよく似てますよね?これを「命の色」って言った子がいてね。その表現力に感心しましたねぇ、、、。
依頼してくれる信頼感。信じるって愛することだと思うこの頃です。それが嬉しく、その人のために夢中になってデザインし、作る、、、。
日常の何気ないひとコマにある幸せを大事にしている人のツボにぴたりとはまるように作ったペンスタンド、いかがでしたでしょうか?
では、また!