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ローコストの特注家具「ラワンベニアで家具を!?」 [ローコストの特注家具]


 ある日ソネブロのお仲間sodepさんから「居間のデスクと収納をお願いしたい」とのメールが来ました。2年ほど前でしたか、初めて遊びに来られたその方は最初から旧知の仲のように話ができる不思議なキャラで「kuniさんって変態だよね〜」「いや、あんただって相当なもんだよ〜」みたいな(笑)。ブログで紫檀のマグネットを買っていただいたのもこの方で、「いや、まさかあーたがこれを買うとはねぇ、、、」なんて会話に二人で大笑いするような愉快なお付き合いです。

001、階段下デスク、収納.jpg

 右のケージはわんちゃん用。居間の一番見える正面のデスクとプリンター、ミニコンポ、CD、写真のアルバムなどを収納する家具を作ってほしいという依頼です。予算は30万。ご希望の内容から言うと予算がけっこう厳しく、何か大胆な割り切り方が必要です。



002.jpg
 
 たたき台の図面をノートパソコンに入れて2度目に伺った時にいっしょに図面を直してゆき、その場でいろんなアイディアを煮詰めてゆきました。

 ご主人はどちらかというと黒っぽい方が好き、でもsodepさんは紫檀のような色合いが好き。両方の好みを満足させられるように箱物は黒の着色で天板を紫檀色という組み合わせです。

 階段下の三角の空間は遊びの空間で約12センチ(中身は9センチ)の小さなキューブ状の箱が3個付きます。センス次第で小さなものをおしゃれに飾れるでしょう。

 それから左のCDの吊り棚の戸には窓を付けてお気に入りのジャケットを飾れるようにしました。


003、ラワンベニア.jpg

 そして、このボリュームを安く上げる割り切り方として提案したのは、全体をラワンベニアで統一して、しかもその断面を意匠として見せてしまうことでした。これはコストを抑えるという意味の他にコーディネートの意味も大きいのです。というのはこの建物は床も壁も窓枠も木の家です。ここに普通の木の家具を置くと馴染みすぎてつまらない。だからもう少しシャープさ、とかシンプルさが欲しいわけです。対比によってどちらもが生かされるのですね。また、居間の左奥にはグランドピアノもあって厚めの塗装の質感はピアノとの馴染みもいい。そんな理由もあってラワンベニアで断面を見せ、塗装もしっかりという考え方をしました。


 さて、ラワンベニアとは合板の中でもっとも安いもので2.5ミリ厚でドアサイズの板が500円程度のものです。看板の下地、ふすま紙の下地とかあらゆる場面で使われていて、皆さんの身の回りにも必ず使われている縁の下の力持ちみたいな存在です。仕上げとして使われるケースは少ないので作る側も下地の意識が強く、写真のように単パンの傷もパテで処理されて平気で売られています。


004、突き板.jpg

 表面の突き板の色も写真の様にクリーム色やピンク、濃いピンクとバラバラです。高級家具の場合はこのラワンベニアに写真上の例えばウォールナットの突き板をプレスしたものをランバコアで組んだ箱の表面にぺたぺたと貼ってゆけばウォールナット仕様のの家具が出来上がるわけです。


005、突き板ベニア.jpg

 3枚のベニアはラワンの表面に上からタモ、中がブラックチェリー、下がブビンガの突き板を貼ったもの。でも今回はこういう仕様にすると予算をはるかに超えてしまいますから、ラワンをそのまま「表し」とする仕様です。


006、ランバコアとベニア.jpg

 左はラワンのランバコアで右がラワンベニアです。ランバコアの断面は不規則で面白みがありませんが、右のラワンベニアは層が薄く、割合規則的なのでこれを数枚積み上げると


007、ラワンベニア.jpg

 こんな風に断面にも面白みが出てきます。これを意匠として使ってしまおうということです。


010、爪痕.jpg

 ただし、9ミリのベニアとなると1層の厚みが数ミリと厚いので丸太をかつらむきにする際に単パンが割れにくいように平たい針状のもので丸太の表面に微細な穴をあけながら丸太をむいてゆきます。矢印をしたところにプツプツと連続した跡が穴です。着色するとこの穴が目立ってくるので、この穴が見えにくく、かつ木目のきれいなベニアを建材屋さんの倉庫に行って選ばせてもらいました。

008、倉庫.jpg


 左の小さな山だけで300枚近くありますがこれは全部目を通しました。この山は2.5ミリ厚で、他にも9ミリ、5.5ミリも使いますから、この仕事のために300枚は目を通したでしょうか。




009、ラワンベニア3層.jpg

 これはデスクの天板用に9ミリベニアを3枚プレスしたもの。ただこの表面には例の針穴がありますから、



011、デスク天板.jpg

 一番上にさらに2.5ミリのベニアを貼ります。というのは2.5ミリベニアの表層に使っている単パンは0.6〜0.8ミリと薄いので針穴をあけなくても割れずにかつらむきができるので針穴が付いていないベニアが多いのですね。箱の内側などの正面からはまともに見えない場所は9ミリベニアの針穴はOKですけど、常時見える場所は2.5ミリの針穴がないベニアで仕上げるということです。


 そうして完成して、取り付けが終わった状況です。
012、ラワンベニアの家具.jpg

 箱はクリアに黒を混ぜた半透明の黒でキューブと天板が紫檀色。

 冒頭の写真の状況と比べるとすごい変わり様でしょう?当初、この空間ではピアノがちょっと異質でしたけど、今回の家具を置くことでピアノ、マック、家具、などがこの空間になじむようになりました。


013、ラワンベニアの家具.jpg

 デスクの上に乗っている箱の側板がL字になっているのはデスクに向かって座って右方向を向いた時に見た目の風通しがいいように上部は奥行きをなくして欲しいという要望をかなえた結果です。(設計には苦労しました)


014、引き出し細部.jpg

 引き出された2段の上にプリンターが乗ります。スキャナーを使う時は引き出して使います。下の段は用紙入れ。
天板から下の引き出しはアルバム入れですね。


015、ラワンに紫檀色.jpg

 sodepさん希望の紫檀色は自分でも快心の色が出せました。箱の黒もそうなんですが、塗りの行程にけっこう手間をかけていましてね。素地着色、下塗り黒を混ぜて2回、下塗りクリアを3回、上塗り3〜6回で途中に研磨があるので6〜9行程以上です。そうして色の深みと体がすれても簡単には塗膜が剥げない表面になります。

016、CD棚.jpg

 CD棚です。窓にはガラス入り。

017、CDの窓.jpg


 45度の面のところにもラワンベニアの断面が意匠として面白みを添えています。



018、CDポケット.jpg

 窓の裏側にはCDのポケットが付いていて


019、CDポケット.jpg

 スポッとCDが入ります。この扉、なかなか面白い作り方をしてるんですよ。



020、フラッシュ戸の芯.jpg

 これが扉の中芯です。扉も断面を意匠として見せているのですが、扉は狂いが禁物です。ですからこの芯材は2.5ミリベニアを5枚接着したもので2.5ミリベニア単体がそもそも3層で出来ていますから、芯自体が15層の単パンで出来ていることになりますから、狂いにも強いということになります。


021、窓ぬき.jpg


 窓部分はこうして芯を組んだ状態ですでに仕上がり寸法になってます。15層の状態も見えますでしょう?この後表裏にさらに2.5ミリをプレスして窓抜きをすれば大きな手間がかからず、精度よく窓付きの扉が出来上がります。




022、彫り込み引き手.jpg

 デスク天板の断面がよく写ってますね。



 今回さらに自分でも驚くほどいい仕上がりだったのは四角の彫り込み引き手でした!丸い彫り込みは何度もやっていますが、四角は今回が初めてだったのです。というのは四角の場合、
023、引き手の型.jpg

 こうして型を作らなくてはいけないのでなかなか出来ずにいたんですね。


024、引き手の裏.jpg

 裏も指が素直に入るようにしゃくりを四角に入れて、



025、引き手.jpg

 出来た四角の引き手は使いやすさも美観にもすぐれものでした!

 娘のFちゃんに手タレになってもらって、わいわい楽しい納品になりました。



012、ラワンベニアの家具.jpg


 自分でも想像以上の出来だったラワンベニアの家具。表現の幅がさらに広がった気がしています。


 今思えば、逢うべき糸に逢い、織るべき布を織れたということでしょうか。その充足感をしっかりと味わえる仕事ができたことが仕合わせでした。












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