ダイニングチェアー 「つつみ」 [ダイニングチェアー「つつみ」について]
ダイニングチェアー 「 つ つ み 」 ブラックチェリーに皮張り
長い間、円だから「M チェアー」としてきたこの椅子ですが、あまりに安易なネーミングなので、そろそろちゃんとした名前を付けたいと思い、このところ広辞苑と漢和辞典を手に、悶々と考えていました。
そもそも、この椅子の原型が出来たのは、1988年のこと。古!
当時は、当別町にある財団法人 スウェーデン交流センターというところに勤めていて、立ち上がったばかりのこの財団の商品として考えたもので、冒頭の写真と比べると、パーツの断面はまだ角があって、痛い感じがしますでしょ?
で、一年後にマイナーチェンジをしたのが次の写真です。
アームの外側と前足の頂点を丸くして幾分か、柔らかさが出て来ました。
その後、独立して1993年に下の形になりました。
今の雰囲気にずいぶん近づきましたけど、貫の後ろが二本の後ろ足に向かってV字になっていて、まだ合理的な構造とは言い切れませんでした。そして15年前にやっとほぼ今の構造にゆきついたのです。
貫と足のジョイントを比べると、
右が17年前で左が15年前。違うでしょう?右の組み方はデンマークの家具などによく見られる手法で、組み手のダボやホゾの長さをかせぐために、ジョイント部だけ足を厚くして、他の部分は削り出しによって薄くして、全体としてはスマートに見せる手法です。
前足も変わりました。パーツは楕円に近い形で統一しました。大きく変わった時点だけをお見せしていますが、細かい変更はもっとたくさんあって、22年間改良を重ねて、去年になって、やっとこのデザインが完成したと納得できたのです。膨大な時間を費やした、ほんとに長い道のりでした。
この22年間、いいお手本であり、目標であり続けたのは、このウェグナーの椅子。彼の椅子の良さは個々のパーツに表情があることと、パーツとパーツの間にある空間のバランスが美しいことですね。
それをお手本として自分の椅子がこのウェグナーの椅子と並べられても恥ずかしくないレベルに高めようと、こつこつ努力してやっと納得できたのです。
こうして並べても、どちらにも、それぞれの良さがありますでしょう?
改良をする時に絶対にはずせなかったのは、この椅子の第一の特徴になっている二本の後ろ足。
それともうひとつ、花びらが座る人をやさしく包み込むようなイメージです。
この椅子に付けた名前の「つつみ」は、この「包み」から付けたのでした。
「 つ つ み 」の特徴はまず、アーム高が645ミリしかないので、よほど厚い天板でない限り、天板の下にすっぽり入ってしまうこと。掃除の時にじゃまになりにくいですよね?
それと、4脚までスタッキングできること。
そして細部の特徴は、
足の頂点に凸Rの面が取ってあり、組み手がダボとくさびで抜けにくい構造になっていること。
アームの木口も前足と同様に凸Rに面が取ってあって、手触りが優しくなっていること。
アームの木目、足の木目にも気を使い、マクロの鑑賞にも耐えられる?こと。などでしょうか?
僕のアイテムの中にダイニングチェアーはこれ一種しかありません。椅子のデザインって、ほんとに難しい。一番厳しい目で見られる家具といえるでしょうね。デザイナーの数だけ椅子のデザインはあるかもしれません。だから、ひとつでも誇りに思える椅子のデザインがあったらそれでいいのではないかと思っています。もちろん挑戦し続けるでしょうけどね。
ただ、今、僕はここso-netでブログを始めてから、それまで気付いていなかったものすごく大切なことに気が付きました。それはモノつくりに大切なことは、デザイン、技術の他に「ストーリーだ」ということです。
そのデザインに、技術に至ったプロセス。注文に至った物語。材料、それ自体の生い立ち、製作工程。実はそれらのストーリーに光を当てることこそ、「付加価値とは何か?」いう漠とした問いの答えがあると気が付いたのです。
今まで、そのストーリーは説明する必要はなかった。ところが時代はそれをしなくてはいけない状況になって来ている。僕はやっと、そこに気が付いたんですね。このブログが果たすべき役割はまさにここにあります。
そんなわけで、年内をめどにこのブログにショップを統合する予定です。この点に関してはずいぶん悩んだのですが、僕が試したいショップの形はやっぱりそういう形かな?と今は思っています。
中国産桑のダイニングセット 「つつみ」 テーブル ¥400、000
「つつみ」は一脚10万(張り地によって上下します)で最低4脚からの受注になります。