ナラ突き板の現代仏壇ーシンプルで芳醇 [現代仏壇]
お久しぶりです、僕は元気でやっておりました。夏場は大工さんのアルバイト、9月からはたまってしまった自分の仕事に集中しています。今日やっと納めた仕事ですが老人ホームの居室用の現代仏壇です。
Tさんの宗派は戒名の軸を飾るのだそうで、奥行きは少なめでシンプルに、でも僕らしい事をというご要望です。
扉を閉じた状態は簡潔に、でも開くと扉の裏の彫り込みに6個のレリーフと棚板が木目彩色という芳醇な世界がという設定です。
今回は無垢材にはこだわらないご様子だったので、突き板ベニアを使った合板構造にしました。箱物に関しては無垢にこだわらない方がいいと僕は思っています。ただ今回の合板はただの合板ではありませんよ。
突き板の貼り方を説明するために、これはシルキーオークの突き板です。
4枚の突き板を右左同じ向きに並べて貼ってゆくのを「追い貼り」といいます。現代はほとんどがこの追い貼りです。あっさりしていることと、部材を取る時の歩留まりがいいのが大きな理由です。
これは一枚おきに左右を反転させて並べた状態。接ぎ口を中心軸として木目が反転するので「ブック貼り」といいます。現代ではめったに見ない貼り方です。大きな面積でこれをすると見方によっては、くどいということと歩留まりが悪いのが理由だと思います。
でも今回は物が小さいのでこのブック貼りにしました。写真は4枚の突き板が貼られているんですが、髄線の斜めのパターンが対象形になってV字を描いているのが解るでしょうか?こういう効果が得られるのがブックならでは、なのです。
すべてのパーツをブック貼りで特注しました。
さて、これはランバコアの断面です。ファルカタというとても軽い芯材の両面にベニアを接着したような断面です。突き板仕事というのはこのランバコアの表面に
2.5ミリ厚の突き板を貼ったベニアを貼付けて行って、まるで全体がナラの無垢材でできているかのような状態にすることですが、この断面を考えるとファルカタを芯として表裏2枚ずつ、合計4枚のベニアが使われることになります。厳密に言えばランバコア表層のベニア2層は無駄なことになるわけです。
そこで今回は桐の集成材を自分で納得するまで削り直して、その表面にナラを貼ったベニアを接着することにしました。というのは既成のランバコアは平面精度があまり良くなくて、大きな家具を作る分には気にならないのですけど、今回のように物が小さくて精度が要求される場面だと気になるのですね。
加えてランバに突き板ベニアを貼るという方法ですとどうしても無駄な層が無駄な厚みになってしまうので、薄くて繊細でかつ精度が高いという次元を醸し出しにくいのです。
そこで今回は桐を芯材とした自家製ランバという仕様にしたのでした。
本体が組み終わってほっとして、次はレリーフのパーツの加工ですが、今回はなかなかいい材料が見つからず、2件目のホームセンターでようやく出逢えました。2枚だけ、今回のパーツにはこれしかないだろうという材料です。
写真の左の材が特によく写っていますが、年輪が細かくてくっきりしています。これに出逢うために数百枚はひっくり返しました。
端の方で実験です。
わずか25ミリ角の中に見事な木目が出ましたよ!
安心して本番の加工。
快心の木目です。
この木目が尖ったところを狙って彫り込むと、
これも狙い通り!
でもね、このパターンは20回やり直しました、、、。そうしてようやく今日納品。
偶然ですが、先に用意してあった無印の家具もナラ材でまったく違和感がなく、
カーテンの色と合わせた彩色の棚板もちゃんとコーディネート出来ました。
ナラ材で作ったつまみもさりげなくおしゃれ。
ブックマッチの突き板とレリーフの納まりです。
快心のパーツを見てくれますか?
20個作り直した成果ですよ。
これはあっさり決まったね。
たった25ミリ角の中にこれだけの木目が出る材がよくも見つかったものです。
見事に楕円。
この不規則な木目がいい味出してます。
最後はこれ、
やったね!
身内の健康問題で集中力を欠き、本体も扉も作り直したというギョエー!!!な制作でしたけど、最後は納得の完成度にこぎ着けました。お客さんの幸せそうなお顔に癒された日でした。
Tさん、何もかも信頼して任せていただいて嬉しかったです。ありがとうございました!
お久しぶりです。
お元気そうでなによりです。
寒くなってきたね。
北海道は冬でしょう?
体調にはくれぐれもお気を付けて。^^
by hatumi30331 (2016-10-24 08:31)
お元気そうでなにより・・・
木目の表現力ってスゴイですね!^^
by トックリヤシ (2016-10-24 12:05)
ご無沙汰です!
素敵なレリーフですね。扉を開けた時に見れる
っていうのがお洒落ですね。
実家の仏壇、イイ色に育ってますよ~。
by みち (2016-10-24 21:38)
美しいですね
木目の丹精に、しかも生きて使ってみえます
見事な調和、くにさんの美意識、本領、こだわり
満載、完結の作品、すばらしいな、
実は、私の実家はお仏壇は、厨子です、
ですから、現代仏壇にとても親しみを覚えます
by engrid (2016-10-27 18:06)
お久しぶりです、待ってました~!
入魂の素晴らしい現代仏壇ですね。私もいつかこういうのに入れてもらいたいものです。。
詳しい制作説明もとても興味深いです。
また楽しみにしています。
by ヘルミーネ (2016-10-29 10:20)
> hatumi30331さん、すっかりご無沙汰してしまってごめんなさい。なんとか元気にやっています。北海道は冬タイヤの心配をする時期になって来ました。
>トックリヤシさん、はいなんとかやってます。南国の木に興味ありますので、10センチ以上の太さの木が倒れたらご連絡下さい(笑)
>みちさん、お久しぶりです。そうそう、開けた時におおー!っていうのがいいかな?と思ってこうしたんです。ご実家のお仏壇、機会があったら写真送って下さいね。
>engridさん、ありがとうございます。久しぶりに美しいものが作れてとても充実した気持ちになりました。厨子って調べたのですけど定義が難しいですね。
>ヘルミーネさん、お待たせしちゃいましたね。あれこれゆとりがなくて、なかなか記事を書く気力がおきない状況ですけど元気にやってます。
by kuni (2016-10-29 12:39)
kuniさん、頑張っていますね♪
木目がとてもきれいです☆
by めりー (2016-11-04 00:18)