ビヨルクbjorkの転生「特注のパレット型テーブル」 [パレット型テーブル]
初めまして、僕「ビヨルク」って言います。kuniさんが付けたあだ名なんですけど、スウェーデン語で白樺の意味だそうです。今日は僕の波乱のお話を聞いてもらえますか?
僕は札幌の北の沢というところのSさんの農地に根付き、すくすくと大きく育ちました。僕らカバの木の仲間は日当たりのよい場所が好きで、山火事の後とか、何もなくなった場所にまず最初に芽吹くタイプの木です。そうして大きくなった足元には、どちらかというと日陰が好きなナラなどの木が芽吹き、やがて数十年もして、それらの木が大きくなったころには、僕らの寿命は尽きて倒れ、やがては彼らの栄養となり、そこはうっそうとした森になってゆきます。だから僕らのようなタイプの木には「パイオニアツリー」なんて言い方もあるんですよ。
いやそんなことはさておき、2010年秋のこと、僕は突然切られることになてしまったんです!なんでもこの土地の一部がトンネルを作るための道路用地になってしまうということで、せっかく大きくなった僕をSさんは、せめてマキにでもしようということにしたのです。
まだもうちょっと寿命があったのに、僕は残念でなりませんでした。
谷にまたがって倒れた僕を、Sさんはわざわざブルトーザーで引っ張って、平らなところまで持って行きました。Sさん70歳を過ぎているのに、すごい気力です!
Sさんは、おもむろにケータイを取り出して電話をかけました。札幌の木工家で国本さんという人に「白樺を切ったのだけどいるか?」って聞いてます。どういうことでしょう?僕をマキじゃなくて木工に使えっていうことなんでしょうか?オーダー家具とかアートも小物も作る変わった人だって言ってます、、、。
やって来たkuniさんは僕を運びやすい大きさに切り始めました。そういうことみたいですね、、、。僕はいったいどうなるんだろう?
工房に僕を持って帰ったkuniさんは、
「テーブルの足にはなるかなぁ」
とか言いながら、さらにバンドソーで小さくして、木口に割れ止めのボンドを塗って、梁の上に置いて乾くようにしました。
それから約一年。ぐっすり眠っていた僕の体にkuniさんがメージャーを当て始めました。
「バスト、ウェスト、ヒップ」
「何してるんですか?僕、男ですよ!?」
「あ、そうか、どうりでメリハリがないと思ったよ~。」
この人ちょっと変?
kuniさん、シナランバのTV収納を作ったOさんから、同じ仕上げのテーブルを頼まれたんだそうです。
写真の下の方の板がシナの積層合板というのだそうで、芯までがシナで出来た合板でランバと違って切り口もきれいなのでテーブルにはちょうどいいのだそうです。ところが、足に太いシナの無垢材が流通していないので、考えた末、白樺の僕を使うことにしたのです。写真の上の方の角材が僕です。こうして並べられた時、シナのことを兄弟かと勘違いするほどでした。
僕の寸法を測って、安心したkuniさんは、叩き台の図面をパソコンに入れて、原寸も一緒にOさんの家に伺い、目の前で図面を修正して、帰って着ました。
テーブルを作り始めるのかと思ったら、妙に小さな捧を削り始めました、、、。
5分の1の模型ですって。足の取り付け位置と傾きのきれいさは図面ではなかなか実感できないので模型を作ることが多いのだとか、、、。
なんだか葉っぱのオブジェが描いてあるけど、、、?
ガラスの円盤を落とし込みにして、下に引き出しを付けて、その中にオブジェを飾るのだそうです。
天板の形は油絵のパレットから来てるのだそうです。あ、Oさんて絵を描くんですか?なるほど、そううことか!おしゃれだなぁ。
とうとう本番の製作ですよ。僕はまず先細りの角になって、その後8角形になりました。丸棒にするための段取りなのだそうです。
「2箇所の節が削り落ちるかどうか、心配だなぁ、、、でもこれが足を取れる材料のすべてだからねぇ」
丸棒になった僕です。心配されていた節は一箇所だけ残りましたけど、パテでうまく処理してくれました。
「スリスリ、スリスリ」
「あ~何やってるんですか!?」
「いや~、あんまりスベスベでさぁ~」
「やめて下さい、そんなにされたら、、、変な感じです~」
「変なってどんなだ~?スリスリ、スリスリ、、、、」
「だ、だから、、、あ~」
相棒の天板の加工が始まりました。
「これほんとにテーブルなんですか?」
「そうだよ~」
有り得ないです、、、。こんな天板ありですか?
バンドソーで切ったアウトラインをヤスリでゴシゴシ。kuniさんゼハゼハ言ってますよ。あ~はは。
僕の頭にはごっつい金物が埋め込まれるみたいです。
接着剤を一緒に入れられかな~り苦しかったけど入りました。
相棒とドッキングです。僕の頭に入れられた金物は先が広がっていて、相棒の金物の穴は中が広くなっています。そこに僕の頭がボルトで押し付けられると、がっちりと組まれるという、「レッグジョイント」という金物なんだそうです。
外からは仕組みがちょっとしか見えないスマートな金物なんですねぇ。
ここはガラスの穴。そこに裏から引き出しのユニットが4本の木ネジで取り付けられます。
引き出しの底板はオフホワイトでそこに取り外しの出来る、木のリングが入ります。このリング、kuniさん不思議なことをして作ってましたよ。
雄型になる円盤をまず作って、そこにゴム系の接着剤で0.6ミリ厚の単板を何層にもグルグル巻きつけて行きました。
やるもんですね?kuniさん、ただの変態じゃないんだ。
「こんなことよくやるんですか?」
「いや、初めてさ~」
「え!!!?」
Oさんの希望で、今回はマグネットは付けずに純粋にオブジェなんですって。それにしても5個の注文なのに17個も加工してるって???
「失敗の予備と着色の練習用ってことさ」
「だからって、こんなに個数がいるんですか、、、?」
「いやー今回は快心の色が出たよ!!!」
「四角いのは全部着色の練習?」
「そうだよ」
「いや、そんなあっさりと、、、カーブの加工までしてあるものを練習ですか?」
「そうだよ、曲面と平面の色の付き方って違うもん」
手前の左端は2回色を重ねた状態、その隣が4回目ですって、最終的には6回色をかけたのだそうです。この人紙一重ですね。
「あ~なんか言った?」
「いえ、なんでもないです」
「紙!?トイレか?」
「いえ、いいんですって」
ひゃー、これがテーブル!?僕はこんなテーブルになったんですか?
違う向きから撮られるとこんなに見えるんですね!?
いやー納まってますねぇ。それにどうです?
相棒の天板の美しいラインに僕の足!
「スリスリ、スリスリ~」
「だから、あ~、、、、」
パレットテーブルの納品 [パレット型テーブル]
こんにちわ、ビヨルクです!今日、僕はOさんのところに納品されました。
Oさんのリクエストで鉋くずも一緒に葉っぱのオブジェと飾ってくれました。
今日の札幌はいい天気で、緑がキラキラしています。
シナランバのTV収納とコーディネートされて、だんだんkuniさんのショウルームと化して来ましたね。
Oさん、嬉しさの勢いでか、そばにあったサイドテーブルまで、この色に塗りなおしてほしいって。またお仕事いただいてましたよ。
セッティングが終わったら、kuniさんとOさん、さっそく僕の上で嬉しそうにパエリアを食べてました。僕の初仕事です。
「じゃあね、kuniさん!また来るもんね?僕はOさん夫妻と幸せに暮らします」
「いいなぁ、、、おれは帰って仕事だよ~。」
kuniさん、最近ちょっとへたれ気味みたいです。
「明けない夜はないですよ~。がんばって~!」
「じゃあな、かわいがってもらえよ~。」
「あれ!?これで記事は終わり!?」
「うん、ごめん(笑)」