やさしいベンチ (特注の作り付け家具) [老後のベンチ]
「怪獣の卵を発見!危険です、退避〜!」
「お〜退避、退避〜!」
「あれ???学長!?なんですかこれ?」
「アーム」
「アーム?」
「玄関に作り付けるベンチのアームなんだけど右と後ろは壁に固定で、左手前に足が一本の構造なんだよ。で、それが伸びた先がアームになるんで、この座面と支柱と足の接合部はすごい強度が要求されるんだよね。」
「で、座面から下の足とアームの支柱は座面でいったん縁は切れるんだけど4本の10ミリのボルトで貫通していてそれをエポキシでしっかり接着という構造なんだ。」
「ひえー、ここまでしなくちゃいけないものですか?」
「うん、たぶんね。一本の棒が立っているだけの状態で体重をかけるわけだから、相当の荷重だと思うよ。支柱はカバ材でにぎりは一輪挿し用にとってあった極上の栃の縮み杢」
「はあはあ、こうなるわけですね?」
「ところでさ、教授。この座面、月桂樹だって気がついてた?」
「あ!私としたことが、卵に驚いて気がつきませんでした。あ、しかもかなりの縮み杢ですよね?これ削るの大変だったでしょう?」
「おー、よくぞ言ってくれました!!!さすがトゥレベルク大学の教授だねぇ!いやこれ大変なんてもんじゃなかったよ。逆目止まらなくてさぁ、研いでは削り、研いでは削り、でも納得できなくて鉋を替えて研ぎも工夫してやっとだったんだよ。でその研ぎがね〜」
「学長!」
「はい?」
「そのくらいにしておきましょう、研ぎの話が始まったら明日の朝になりそうです。」
「あの、もうちょっとだめ?、、、」
「はい、だめです。」
「え〜、、、、。」
「学長、ここは?」
「うん、僕を理解してくれる大切な友人で建築家の小倉雅美さんのお母さんの家の新築現場
( 小倉さんのブログは http://dd07-ogu.blogspot.jp/ )
「玄関が障子で仕切られているって、なんか新鮮ですね」
「お母さんは今はまだまだお元気だけど、だんだん年を取って行った時のためにこんな工夫をしたんだね。」
「愛情たっぷりぷりですなぁ」
「だから気合いが入ったんだよね〜」
「視線を振ると開放的な居間が」
「お〜学長の作ったキッチン収納にカウンターやら、あ、奥のオープン棚もですか?」
「うん、そうそう、
への字に曲がったカウンターに座るとテレビと外の景色が見える特等席。」
「気持ち良さそうですねぇ、、、。」
「キッチンとアイランドの天板はウォールナットのウレタン塗装。吊り棚はシナ。」
「逆から見ると。吊り棚の下に小さなカップボードがぶらさがったように付いているんだ。背中が透明ガラスで
戸が磨りガラスなので普段はシルエットしか見えない。」
「面白いデザインだよね。」
「トイレにも月桂樹の天板だよ。手洗いのボウルはお母さんの趣味の陶芸作品。水道の配管はこれから。」
「今回の家具はすべてO女史のデザインですか?」
「うん、でも僕の意見を尊重して柔軟に変更してくれるから仕事はうんとしやすかったよ。」
「おい、たまごん。かわいがってもらえよ〜。」