ちゃぶだい?座卓?お膳?常夜灯? [ちゃぶだい?お膳?]
国本美術館館長さんから新たな課題をたまわりました。お題は「屋根裏部屋で使う小さな座卓のようなもの」説明されたニュアンスは友人と一杯やりながら趣味の話に花を咲かせるためのテーブルということのようです。
今までここに作って来たものは木味を出した、いかにも「木のモノ」のニュアンスが強かったので、今回は方向性を変えて軽快な感じで行こうと考えました。
シナの1.6ミリの曲げ合板を5枚プレスして8ミリにしたものが部品の共通仕様です。ということは一番上の天板は上から見れば8ミリにしか見えないという、頼りないほどに薄い見えになります。実際にはその下に直径530ミリのサブ天板がありますから、天板としての強度はちゃんとあります。天板の高さは図面は180ミリになっていますが、最終的には150ミリになりました。
サブの天板にはカーブした足が刺さって組み手を作る構造です。それにしても不思議なお膳?ちゃぶ台?なんと言うべきでしょうか?どなたかアドバイスを、、、。(笑)
シナの1.6ミリの曲げベニアは曲げベニアでもっとも薄いもので、それだけにこんなふうに簡単に筒状になってしまうほどです。
上が1.6ミリで下が4ミリ。曲げベニアの中で唯一この1.6ミリだけが中身までシナでできています。4ミリは中芯のうちの2層は色の濃いラワン材です。上の1.6ミリを5枚プレスするとまるでシナの無垢材で出来ているかのように見えますが、実際は各層が90度向きを変えて積層になっているのでどの方向にも狂わないのに、まるで無垢の表情になるというわけです。
足の部品を曲げた状態でプレスするための型を作りました。
接着剤をつけた5枚をこの型に入れてプレスして半日放置すれば8ミリ厚の曲面が出来上がります。
カットのための型に載せて正確に切ります。
型からはずした部品は曲げベニアの反発力でカーブが型よりも3%ほど戻るのでそのカーブに合わせた型を作ります。
この一本の溝は「型を作るための型」になります。
サブ天板用の型が出来、これを使ってほんとのサブ天板を作ります。
これがそのほんもの。
このサブ天板の溝に曲面の足が刺さり組み手となります。線状でしかも曲線なのでその接着力はそうとうに強力なものになります。
不思議な構造でしょう?その理由は最後で種明かしします。ウシシ、、、。
天板はまず丸く削り出し、12個の角穴を空ける型を作ります。
まず穴の位置に20ミリの正方形を留めて、
その外側に卍状にベニアを打ち付けます。
中央の正方形を外せば、非常に正確な角穴の型が出来上がります。
これを12回繰り返して型が出来上がりました。これを使って慎重に穴をぬいて行きます。
きれいにぬけました。
穴部分の板厚は2.5しかありません。なぜかというと、
家具の引き手の時のように裏をえぐっているからです。ここの板厚が8ミリのままだと斜め方向から向こうを見通せないからなんです。その理由もウシシ、、、(笑)
穴の外周をきちんと仕上げて、
エッジもきれいな半丸に整え、
天板とサブ天板の関係はこういう感じ。
仮組をしてみます。これに天板が乗れば完成の形。
木地は完成しました。
この仕事に使ったルーターという機械の刃物です。一番下の刃物の直径は2.5ミリほど。既製品を自分で研いで細くしました。この刃物の材質は超硬という人造ダイヤではないと削れないほど硬い材質で刃物研ぎ用のダイヤモンドホイールで自分で微調整しながら使っています。精度が高いものを作ろうとすると刃物の管理にも気を使います。
さて塗りに入りますが、今回はうっすらとクリーム色の着色をすることにしました。というのは、
写真の中央部がシナにクリアを塗った色味で左が素地で右がうっすらとクリーム色に着色した結果です。クリアを塗ると木味が出過ぎて「クラフト」の味付けになってしまいます。今回は「軽い」がコンセプトのひとつですから素地のような明るく、軽い印象の塗りにしたいわけです。だから素地の印象をそのままに見えるようにクリーム色の着色としたわけです。
塗り上がった部品をいよいよ組み立てるのですが、天板に傷が付かないように厚手のビニールで保護しました。
プレスで組み上げましたが、わずかにゴミが落ちていたらしくプレスから出してチェックしたら凹み傷が付いていたのでもう一度研磨して塗り直して完成しました。
今回のコンセプトは「光と影のデザイン」です。角穴を通った光が木漏れ日のような効果を出せました。
(型を保存しますので、95000円で受注いたします。)
サブテーマは「極限まで薄く、軽く」。8ミリという常識を超えた薄さがほんとに軽やかな印象になりましたし、
シナの積層のピッチが細かいのでまるで年輪のようにも見えて無垢材かと勘違いさせるほどです。予想以上の出来上がりになりました。
ウシシの種明かしはこれ。ダイオードの照明がマグネットで天板裏に留められるようになっていて、
照明を落とせばこんなお楽しみもあります。(常夜灯にならなくもない、、、笑)
角穴部の板厚を薄くしたおかげで斜めからでも下の光具合が見えて「ん!?」というヒントになります。
実は今回のデザイン、時計とセットになっていましてね。居間にかけられた時計を見て、屋根裏でそこに気がつけば「なるほど」という話題にもなりましょう。(この時計の記事も近くアップします)
「光と影のデザイン」いかがでしたでしょう?