お茶室と腰掛けと [お茶室と腰掛け]
順調に忙しくしています。ほとんど訪問もできずにごめんなさいね。今日はその中の腰掛けを。
旭川から買って来たミカン科のキハダ。耳の部分が黄色いでしょう?
お茶室用の腰掛けですから、デザインにクセのあるものは求められないので、木味だけで見せようと、キハダの中でもとにかく黄色味の強い材を探しまくりました。そして座面の前端にこの黄色い耳を見せようという計画。
耳のラインに合わせて削るのに反り台のポータブルプレーナーを使います。
こんな風に構えて、上半分を少し傾けて、下半分は垂直に近く、ノミ跡のように削ってゆきます。
削りくずが黄色いでしょう?そしてこの削り跡に見えて来る木目、ウシシの美しさ!これがやりたかったのですね~。ここが一番の見せ所。
前端と中央に黄色のラインが走ります。渋さの中に只者ではない雰囲気があるでしょう?
1,8メーターの長さを約1メーターと80センチに分割したのは手前側の後ろに物入れがあって出し入れする際に動かしやすいようにというご要望。
足は70ミリ角あるんですが、そんな太いキハダの材は手に入らないので35ミリの板を2枚合わせにします。一枚の板の真ん中で切った断面を正面に見せれば、
木目が対象になって、足を見ただけでも「あれ!?」という仕掛けですね。
腰掛けに二人が座れば当然100キロを超えますから、足と貫の組手は強度にシビアにならざるを得ません。このホゾ穴に2方向から貫が入ります。
ズブリ。で、このホゾの先には内緒内緒の加工がしてあります。
ホゾ穴をのぞくと左からの光が見えているでしょう?穴が貫通している。そこに入るホゾは、
実は3枚の組手になるように加工してあるんです。穴の奥で握手!って感じですね。
こんな風にね。
完成してお茶室に収めました。このお茶室は去年の10月から11月にかけてひと月と1週間ほど、仲のいい大工さんと二人でマンションの中に作ったのです。生まれて初めての加工は驚きの連続でした。
腰掛けの向こうの物入れはkuniが作りました。ただね、作るのに精一杯で写真なんて写すどころじゃないし、まして自分の現場ではないしね。お茶室の製作過程を記事にできたら、10記事なんて軽く超えるわね。そんなことできたらちょっと前例のないことで画期的かもですけど、その手間もとんでもないですね。
にじり口です。奥を左に曲がった突き当たりにも
kuniが作った棚があったり、
お茶室の中は、
この工事が始まった時に一番最初に頼まれたのは、「クニさん、杉の柱をぜひとも削ってね!」でした。
杉の白太の柱が十数本あったのですが、これは木が柔らかくてよほど切れる鉋じゃないと仕上がらないのです。ええ、もう夢中になって削りましたよ。朝から夕方まで一気に削ったら「クニさん、早すぎ!もっとじっくりやっていいのに」って(^_^;)
最後の方になってやっと理解できました。お茶室ってものすごく神経を使います。身動きひとつひとつに神経を使わないとあちこち傷を付けたり、収めが荒くなったりと具合が悪いことがあります。
水屋ですね。こうして写真を見ると、あそこもここも苦労したなぁって思うのですが、過程の写真が一つもないので説明できないの、ゴメンね~(^_^;)
人生初体験、お茶室の手伝いはホント勉強になりました。おまけにここを設計した先生がえらく気に入ってくれて、
「国本さん、これからは僕がマネージメントをするよ!」なんてね。
「マネージャーよりパトロンが欲しいんですけど~」とか、言っちゃったりして(^_^;)。
実に楽しい現場でした。
Aさんご夫妻、Y先生、ありがとうございました!