2009年12月作のオブジェ。ちょうど4年前の今頃のことなんですね。青い鳥さんからのご注文のメールにぽろりと涙し、あらん限りの集中力で作った奇跡のオブジェです。この制作途中で
こうしてパーツを並べた時、その美しさにはっとした瞬間がありました。この時、いつかこういう時計を作ろうと決めていたのです。でも目盛りのデザインのアイディアがなかなか浮かばず、また電波時計のムーブメントが手に入らないことで制作に踏み切れずにいました。加えてこれに使ったサーモウッドという材料が店舗からなくなってしまい、4年間夢のままであったのです。
ところが最近になってできたある店舗で扱っているのを見つけて、ようやくその夢を実現しようと思ったのでした。
これがそのサーモウッド。
左は通常のパイン材の1×4(ワンバイフォー)で右が同じパイン材のサーモウッドの1×4。左の乾燥温度は100度以下ですが右のサーモウッドというのは205〜210度で乾燥させたものを言います。だからきつね色に半焦げ状態なわけです。この高温乾燥によって腐朽菌に冒されにくいとか寸法安定性がよくなったりする効果があるのだそうですが、単価が通常の1×4の5倍はすることと効果が目に見えないのがあだとなって店先からは消えやすい商品なんでしょうね。
さて、この方向の制作の何が難しいのかを説明しましょう。
これはCGですが、えぐった四つのパーツを並べて、その中央が花びらのような木目にするためにはとてつもない技術、知識、経験を要求されます。というのは、
丸太は定規で線を引いたようにまっすぐではありません。丸太がうねっていれば、その中心線も赤の線のようにうねっています。中心線をかすめるように描いた2本の黒の線で切り出したのがAの材料です。青の線は4年目の年輪だとしましょうか。するとCGに描かれたような花びら状の木目をきれいに見せるためにはB図のようにこの4年目の年輪にそってパーツを切り出して行かねばならないのです。
しかもBの材料を正面から見ると(B')幅方向にも年輪は大きく曲がっているとすれば、パーツは幅方向にもその曲りに沿うように切り出して行かねばならないのです。
もうひとつ加えるに丸太は切った場所によってその断面は正円ではなく微妙にゆがんでいてその歪み方も切った位置によってまちまちなのです。
このオブジェが「奇跡のオブジェ」と言ったのはそういう背景があるのです。これは例えるならフィギアスケートの4回転以上!?みたいなものですね、、、。
さあ、「光と木目のアート」の制作が始まりました!
まず、節と節の間の木目が通ったところを取ってゆきます。
そして4年目の年輪(中央の年輪幅が狭いところ)の幅が一定になるように削ってゆきます。それが終わったら正方形をできるだけ多く切り出し、
すべてを同じカーブでえぐります。必要な個数25個に対して34個取ることはできましたが、何個が生き残るかはまだわかりません。
例えばこの2個の年輪を比べると放物線のきつさが違いますでしょう?切った場所によって丸太の断面が微妙に違うというのがこれです!この2個を並べることは出来ません。
上は内部割れ、下はシミが出て来てという具合ですでに3個がハネとなりました。
ベルトサンダーで荒仕上げをし、
年輪の中心を正確に角とした正方形を切り出します。この作業によって成功率が大きく変わってきますから慎重に、、、。
これは失敗例。正方形を右端ぎりぎりに寄せましたが、年輪の中心はもっと右という例です。えぐる前と後で年輪の中心が右にずれたということです。
途中であきらめそうになりましたが、2時間並べ替え続けてようやく成功。
やったー!!!
4回転成功です!
ちなみに奥のハネの4個を並べてみましょうか?
ね?ぜんぜん合ってないでしょう?
ほっとして、一個ずつ最終仕上げに。
1ミリの隙間をあけながらベースに接着です。
そして奥の型を使って目盛りの彫り込みをしました。
半球状に彫り込んだその中に出てくる木目の変化も面白みの要素になる狙いがあります。
さて、いよいよ「光のアート」と言った意味が解ります。
どうですか?向きによってはこんな風に金色?って思えるような反射をしてくれます。これは木の繊維の向きが一個おきに90度振れているから市松状に光るのです。
そして完成!
今、角から二つ目が光ってますでしょう?これを逆の方向から見ると
ほら、今度は角が光る。そして中間の方向から見ると、
均一に反射する。面白い効果でしょう?「光と木目のアート」
彫り込みの中に見える木目の変化も一箇所ずつ違います。
ほら、ここは細かいでしょう?
「木のレリーフの壁掛け時計 「頂」 ¥80,000」と公開する予定だったのですけど、なんとこの時計、制作途中で買い手が決まってしまいまして、めでたくお嫁入り。
最終的にそのお宅の照明具合に合わせてシルバーの針に変更しました。
「頂」はいただきと読みますが、僕の技、知識、経験の頂点であり地球からの頂き物という両方の意味をこめています。
2014/5/22追記
可能であれば制作してほしいというご依頼を受け、幸いにも材料が見つかりまた制作することができました。
木のレリーフ時計
ー光と木目のアートー「 頂 」
盤面270ミリ角、電波時計のムーブメントを使っています。
杢目の妙と光の市松の反射。
(ホコリを払うのを忘れてしまったのはご愛嬌でお許しを)
木のレリーフ壁掛け時計「 頂−1 」 ¥80,000
お買い上げいただきました
盤面160ミリ角の置き時計です。
この光の条件ですと4隅と中央が光り
この向きですと中央4個が光ります。2色の材を使っているのではないのですよ。あくまで同じ板から取ったパーツで同じ色なのに光りを反射する方向が違うから2色に見えるということです。
木のレリーフ置き時計「 頂−1 」 ¥40,000
お買い上げいただきました
作品をご希望の方は青文字のタイトルをメールでお知らせ下さい。
ここ数日慌ただしくしております。発送まで少しお時間をいただくやもしれませんことご了承下さい。