箸置き、ペンスタンド、一輪挿しの新作 [日々の出来事]
「学長!これなんですか?」
「うしし〜玉手箱〜」
「え〜開けたら髪の毛がなくなっちゃうなんてなしですよ〜」
「まぁ、そりゃ大丈夫だと思うよ」
「なんかやな感じ、、、、」
「おー!!!なにこれ?かわいい!」
「ハイチュウ?って言った人がいたなぁ」
「あん!?」
「正解は箸置き♪」
「いや〜おっしゃれ〜!パッケージングがいいですねぇ」
「でしょでしょ!」
「だけどねぇ、これすんごい苦労したのよ、聞いて聞いて」
「長そうだけど聞きますか?」
マグネットの記事の時にopasさんが「箸置きにしましょうよ」なんてコメントがありましてね。そう言えば20年程前に作ってあまりの大変さにやめてしまった箸置きがあったのを思い出しまして、またやってみようかなと思ったのです。ただこの箸置きの制作はまず刃物の消耗が激しいのも大きな課題で、機械屋さんに話をしてみると、なんと運良く中古の刃があったんです。
板の接ぎ口を作るための刃なんですが、箸置きにするにはちょうどいい歯形なので譲ってもらいました。
で、もうひとつ大変なのはこのデザインは木材の木口をこの歯形で削りたいこと。そのためには巾方向に短冊状に切った材料を加工してゆくことになりまして、銘木の端材は棒状のものが多いので巾の広い材料がほとんどありません。となると
こんな風に小さなブロックを張り合わせて巾のある材料にしてから短冊状にして加工して行く事にならざるを得ないわけです。今回6種の組み合わせで計12樹種で作ったのですが、そのほとんどの樹種でこの行程が必要になってしまったために膨大な手間がかかってしまったわけです。ほんと途中でうんざりしました。
削り出した色違いの材を
こうして接着すれば箸置きの元ネタができる。金太郎飴の棒のようなものですね。
6種の組み合わせ。
これを約15ミリ角に切り出して、
まず長手を5度に切る。
次に木口も5度に切る
最後に上の面をカーブに削り出したら
あとはひたすらサンディング、、、。
#120、#240、#400と3段階にペーパーをかけるのですが、今回150個ほど作りましたからサンディングだけで3日かかって、げっそり。マグネットはすべての行程を機械化できるので単価が下げられましたけど、この箸置きは仕上げの行程の大半は手作業になってしまうのでマグネットの倍の手間がかかりました。
だからと言って単価は倍にはできないというのが20年前に苦しんだところなんですね。すっかり忘れてました、アホですね(笑)
ブラッドウッドと桑の組み合わせ。ブラッドウッドは南米産でクワ科なので色は違えどクワの組み合わせということになります。
ニガキと月桂樹。ニガキはキランキラン!
カリンとハリエンジュのこぶ。
カバこぶとウォールナット。
これはたった一組しか作れなかったクラロウォールナットとイチイの組み合わせ。
パープルハートとイタヤカエデ縮み杢。
「こりゃ楽しいですね!おまけにすごくプレゼント向きじゃないですか?どうしてこういう可愛くてかっこのいいものを今までださなかったんですか!?」
「だから言ったでしょう?すんごい手間がかかってうんざりするんだってば!」
「そりゃそうかもしれませんけどね、学長の作るものはね、ニュアンスとしてカワイイが足りなかったんですよ。でも今回は特にパッケージでそれが実現出来てますでしょう?そこがいい、実にいい!名作誕生ですなぁ」
「なんだよ偉そうに」
「わたしなんたって教授ですからな」
「ふ〜んだ」
「ところでだね、今日は一気に3種の作品の紹介で、次はペンスタンドなんだけどね。20個程作ったのだけどちょっとトラブルがあって12個がハネになって完成したのは8個6樹種なんだけどさ。どれも愛着があるのだけど、特に紹介したいのはシルバーオークの柾目のものなんだよ。
ヨーロッパのナラ材なんだけど、今までナラの髄線っていうのは大きな面で見せるには面白みが解るのだけど、小さなもので髄線を面白く表現出来なかったんだね。これが今回快心の出来映えになってやっとナラ材の小物での生かし方が解ったんだなぁ、、、。これが嬉しくてね。」
「おー!!!これはいいですね!!!ほんのわずかに柾目を傾けて髄線が放物線を描く様にしたわけですね!?いやこりゃすばらしい工夫です。座布団3枚ですなぁ!」
「でしょでしょ!? で、最後は超久しぶりの、そしてたぶんこのブログでは初登場の一輪挿し「Triad」
「ありゃ!?グリーンの木目!?こんな木があったわけじゃないですよね!?」
「ウシシー、そう見えたらやったぜ〜てな感じ。これね白とグリーンを年輪の一本おきに着色したんだよ。」
「えー!!!?そんなアホなことを!!!?」
「アホ言わなくてもいいでしょう?」
「いや、だって一本一本グリーン、白、グリーンって!?それはやっぱりアホでしょう!?」
「芯持ち教授、木工芸って言うでしょう?僕らはさ芸人でもあるわけよ。人が面白いと思う事を無限に追求してゆかないと飽きられるでしょう?」
「はぁ、そういう意味ではアホは褒め言葉ですかね?」
「いや、う〜んまぁそうとも言えるけど、、、なんかだまされたような、、、まぁ、こんなのもあるよ」
「ピンクと白〜」
「黄色と白〜」
「グレーと白〜」
「ウヒョー!!!これは新境地ですね!!!これは無限の可能性があるじゃないですか!?」
「そうそう、レリーフに使っても表現の巾がまた広がるしね。」
「しかしなぜこれもっと早くにやらなかったんですか?」
「いや、アータね、これ難しいのよ。年輪を一本一本吸い込みムラもなく、まるでこんな色の木があるかのごとくに着色するってね。これもう10年以上暖めていたアイディアだけど技術的に上手く行かなかったのさ。」
「え!?じゃぁどうして今回できたんですか?」
「えへへ、それだけはヒ、ミ、ツ。」
「私にもですか!?まぁいいけど、、、しかし学長、なんか今回はカワイイがキーワードになってますねぇ。これはいい傾向ですなぁ。今まで学長に欠けていた部分が開拓出来始めている気がしてきました。我が校の未来もちょっと明るくなってきそうですなぁ、、、」
「うん、そういうことにしよう〜」
スゴいスゴい!!
kuniさんらしい、こだわりの作品!
すてきです!^^
by hatumi30331 (2016-06-01 07:31)
知恵と技が生む素晴らしい作品ですね。
箸置きは高級料亭の卓上に似合いそう。。。^^
by トックリヤシ (2016-06-01 14:21)
もう全くopssは勝手に好きなことばかり言って(笑)。そして、そのopasの予想を超える作品を作り出すkuniさんって・・・スゴい!
by opas10 (2016-06-02 22:26)
箸置きちょっと痺れました
by takumi (2016-06-04 08:33)
自然は、美しいですね
その美を引き出して、より輝かせる
その手際、お手間様は、なんとご苦労なのかしら
でも、楽しんでみえますよね
木と話しながらの工程、作業ですよね
愛ですね、
by engrid (2016-06-04 17:54)
このような数々のご苦労を知れば知るほど、
kuniさんのご厚意が身に沁みます・・・。
箸置きの素晴らしさに驚きました。
やっぱり木の温もりは素敵ですね ^^
by MIKUKO. (2016-06-04 18:57)
> hatumi30331さん、いつもありがとうございます。
>トックリヤシさん、本当は普通の方にも使ってほしいのですけどね、、、。
>opasさん、はい、ほんとに言いたい放題(笑)でもさすがに元マーケターだけに一言が考えさせられますよ。
>takumiさん、ありがとうございます。
>engrid さん、やっと作る事が楽しめる気持ちに戻ってきました。
>MIKUKO.さん、温もりだけではいい尽くせない世界を目指しているんですけどね。
by kuni (2016-06-22 09:18)