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幻の青黒檀?ー銘木のマグネットの新作 [日々の出来事]


 2月末のこと、帯広の国本美術館(笑)に訪れた帰り道、馴染みの銘木屋さんに寄りました。

 返り際に「これあげる」と差し出された数枚の木っ端に目が点になりました。

 「青黒檀!?」

001、青黒檀を溶剤で拭く.jpg

 翌日のこと、この青黒檀を削ってみると中は「あれ!?緑っぽい!?」

 ええ、溶剤で湿らせたティッシュで拭いてみてもやっぱり緑色味を帯びている。かつて銘木の世界には黒檀というのは3種類ありましてね。真黒と呼ばれる本黒檀と縞黒檀と青黒檀なんですが、現在普通に流通するのは縞黒檀だけで本黒檀(マグロ)と青黒檀はこの道に入って以来見た事がない幻の銘木だったのです。

 「どうしてこんなもんがあるの?」と聞くと、「うん、同業者の古い在庫を分けてもらったんだ」とか。はい、そんなことでもないと青黒檀なんて手に入らないでしょう。

002、青黒檀、縞黒檀、ブラウンエボニー.jpg

 写真にするのがすごく難しかったのですけど、左下が青黒檀で上が縞黒檀、そして右はブラウンエボニーです。青黒檀はやっぱり青に色味が傾いてませんか?濃いオリーブグリーンの細かい縞模様が削ると出て来るのです。だから今見えている緑の縞模様はやがて真っ黒に戻ってゆくんでしょうね、不思議です。

 ブラウンエボニーも旭川の材料屋さんが南米から試験的に入れてみたというだけにネットで情報を探してみましたけれど、日本語ではヒットしませんでした。この写真は黒檀3種、青、縞、茶黒檀ということになります。(写真自体が日本初かも!?)こんな材料を使ってマグネットを作ろうと思う事自体イカレてますね。

003、ボコテ.(リオグランデパリサンダー)jpg.jpg

 左はボコテという材でムラサキ科、産地はメキシコあたりとか。

あまりの美しさに25年以上切るのをためらった材です。


004、黒柿、タガヤサン.jpg

 左が超希少材の黒柿で右はタガヤサン。このタガヤサンは古い座卓の再利用なんですけど、ムラサキタガヤかもしれません。

006、ピンクアイボリー、チューリップウッド.jpg

 左はピンクアイボリー(クロウメモドキ科)その名の通りまるでピンクの象牙のイメージで削る感触は木ではないようなカリカリとした印象でした。

 右はチューリップウッド(マメ科)肌色をベースに鮮やかな赤と青紫の縞が入ったこの世の物と思えない美しさでした。これらは数個しか作れなかったので非売で工房コレクション入りです。






005、ワイルドオリーブ.jpg

 これまた激レアのワイルドオリーブ。葉書サイズで5000円とか、めっちゃ高いですね。削ってびっくり、オリーブの香りはするし削った肌がもうツルンツルンで感動しました!

 ここまで載せた写真はすべて無塗装の艶なんですよ。比重のある材はペーパーの番手を細かく#1500なんてかけてゆくと、もう塗装が必要ないくらいに艶が出て来ます。その肌触りはほとんどの方が知らないだろうと、あえて無塗装にしてみたのです。



 ここからは塗装した方が木味の出るタイプ。

007、御蔵島の桑(金桑).jpg

 前記事に書いた御蔵島産の桑、島桑ないし金桑と呼ばれる貴重品でしかもその股杢です。右のものは金箔でも貼ったような輝きで、まさに金桑!これもコレクション入り。





008、アテ材.jpg

 選びに選んだ、おそらくロシア産のモミ材のアテ部分ですね。


009、カリンのリボン杢.とブビンガjpg.jpg

 左はカリンのミニリボン杢?と言ったところでしょうか。4ミリピッチほどで順目と逆目が交互にあるので光の縞になっていて、それを「リボンを並べたようだから」リボン杢という言い方があるんですね。

 右は第一級の巨木タイプ、ブビンガ。



010、ブラッドウッド、パープルハート、ビャクシン.jpg

 右奥がブラッドウッド、左がパープルハート、手前が中国産のビャクシン。
 


011、杢のいろいろ.jpg

 奥左がイタヤカエデの縮杢、奥中が月桂樹の縮杢、奥右がイタヤカエデの瘤。

 手前左はヤマモミジの鳥目杢、手前右は白樺の股杢です。


 さて最後に驚いていただきましょうか?

012、肥松.jpg

 これは黒松の脂が多い部分の材です。色が濃いところがヤニの集中しているところ。手前に3ミリの切片がありますでしょう?これを、


013、肥松の透過.jpg

 奥から光を当てるとヤニの集中したところが透けて見えるのです。こういうヤニだらけの松は黒松、赤松にごく稀に存在するのですけど、これを「ヤニ松」とか「肥松」と言い、これはこれで銘木の扱いなのです。



015、脂松−1.jpg

 これはパイン材(欧州赤松)のヤニ松でして、窓際に置いて透かして見ると、、、


016、脂松−1.jpg


 どうです?「手のひらを太陽に〜」みたいな、まさに命の色!

 ただし、ヤニ松はじわじわとヤニが出てくるのでまめに拭いてやらないといけません。その昔、このヤニ松で出来た床柱なんてどうしてたんでしょうねぇ?その家の奥さんか女中さんが毎日拭き込んでしまいにはヤニの被膜が塗装のようにツヤツヤになったんでしょうかねぇ、、、。



 こうした希少材でマグネットを作るって馬鹿げているのかもしれないけど。

 銘木って普段の生活で触れる機会がまったくないですよね。それはよほどの豪邸とか超高級料亭にでも行かないと接する機会なんてありません。でもこうして、ごく小さな物にすれば手に入れる事さえ出来る。僕にとってはそこが大事なんですね。

 このマグネットを作っている最中に何人かの営業さんがこれを見て、皆感嘆の声を上げてゆきました。

 「えー!!!?これ木ですか!!!?えー塗ってないのにこんなにつるつるなの!?」とか

 「この色染めたんじゃないんですか、え〜!!!?」とか。

  身近にこういう物があると癒され元気をもらえる人が必ずいます。僕はそういう人のために作るんですわね。 





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コメント 8

hatumi30331

いつもながら、この柔らかいイメージが素敵!
木目って良いよね。^^
もちろん!kuniさんの技術が凄いんですが!^^
自分の納得出来る作品が、沢山出来るといいね。
by hatumi30331 (2016-04-01 12:29) 

幹

グリーンオリーブの青黒檀に始まり、実際に手に取り肌触りを感じたい子が大行列!!
そして最後に“手のひらを太陽に”!
マグネットでも表現できるなんて!!
思わず「うわぁぁぁ!!」と叫んでしまいました。ずるい!久しぶりに心躍りました!
by 幹 (2016-04-01 13:33) 

トックリヤシ

こんなマグネットいっぱい並べて癒やされてみた~い!^^

by トックリヤシ (2016-04-01 19:59) 

POKO

私も毎日見て癒されて、元気いっぱいもらってるよ! 感謝!
by POKO (2016-04-01 22:06) 

みち

手のひらを太陽に!面白い!!
貴重な材が一杯ですね!木目マジック♪
ツルツル、すべすべなのが、写真からも分かります。
十勝の作家さんのHPです。札幌の家具屋さん、って話してみたけど、ご存知なかったみたいでした。
http://www.tokatinokinoutuwa.com/
by みち (2016-04-02 22:05) 

engrid

驚きですね
マグネットですけれど、アートな作品
ひとつひとつが、輝く主張が
二つとない、わたしひとりをみてください
と言いながらも、揃うと圧巻、
和の美しさです
by engrid (2016-04-03 09:12) 

opas10

この材料でマグネットですか!?せめて箸置きにしましょうよ(笑)
by opas10 (2016-04-03 11:00) 

kuni

>hatumi30331さん、堰を切った様にやる気が出て来て200個程度のつもりが倍の数を木取り(荒切り)してしまいました。笑っちゃいますね。

>幹ちゃん、え?心躍ることがあまりないと?そんなはずないでしょう?

>トックリヤシさん、癒されて下さい。落ち着いたらプレゼントします。

>POKOさん、調子どうですか?

>みちさん、ろくろの作家さん、僕もしりませんでした。木地屋さんって一般の木工とはちょっとジャンルが違うのであんまり交流がないんですわね。まぁ、僕自体が単に社交的じゃないだけとも言えるんですけど(汗)

>engridさんのコメントってどれだけ熟慮してるんだろう?っていつも思います。深く理解した上でのコメントにいつも有り難く思います。

>opas10さん、箸置きね!もう何年も忘れていたデザインを思い出しました。じっくり考えてみます!
by kuni (2016-04-16 23:22) 

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