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木の壁掛け時計「頂」ー光と木目のアートー [shop]


001、木工家、国本貴文、木のオブジェ.jpg

 2009年12月作のオブジェ。ちょうど4年前の今頃のことなんですね。青い鳥さんからのご注文のメールにぽろりと涙し、あらん限りの集中力で作った奇跡のオブジェです。この制作途中で

002、木工家、国本貴文、木のオブジェ.jpg

 こうしてパーツを並べた時、その美しさにはっとした瞬間がありました。この時、いつかこういう時計を作ろうと決めていたのです。でも目盛りのデザインのアイディアがなかなか浮かばず、また電波時計のムーブメントが手に入らないことで制作に踏み切れずにいました。加えてこれに使ったサーモウッドという材料が店舗からなくなってしまい、4年間夢のままであったのです。

 ところが最近になってできたある店舗で扱っているのを見つけて、ようやくその夢を実現しようと思ったのでした。

005、サーモウッド.jpg

 これがそのサーモウッド。


006、パイン材のサーモウッド.jpg

 左は通常のパイン材の1×4(ワンバイフォー)で右が同じパイン材のサーモウッドの1×4。左の乾燥温度は100度以下ですが右のサーモウッドというのは205〜210度で乾燥させたものを言います。だからきつね色に半焦げ状態なわけです。この高温乾燥によって腐朽菌に冒されにくいとか寸法安定性がよくなったりする効果があるのだそうですが、単価が通常の1×4の5倍はすることと効果が目に見えないのがあだとなって店先からは消えやすい商品なんでしょうね。



 さて、この方向の制作の何が難しいのかを説明しましょう。
003、木裏、近.jpg

 これはCGですが、えぐった四つのパーツを並べて、その中央が花びらのような木目にするためにはとてつもない技術、知識、経験を要求されます。というのは、


004、曲り丸太.jpg

 丸太は定規で線を引いたようにまっすぐではありません。丸太がうねっていれば、その中心線も赤の線のようにうねっています。中心線をかすめるように描いた2本の黒の線で切り出したのがAの材料です。青の線は4年目の年輪だとしましょうか。するとCGに描かれたような花びら状の木目をきれいに見せるためにはB図のようにこの4年目の年輪にそってパーツを切り出して行かねばならないのです。

 しかもBの材料を正面から見ると(B')幅方向にも年輪は大きく曲がっているとすれば、パーツは幅方向にもその曲りに沿うように切り出して行かねばならないのです。

 もうひとつ加えるに丸太は切った場所によってその断面は正円ではなく微妙にゆがんでいてその歪み方も切った位置によってまちまちなのです。

001、木工家、国本貴文、木のオブジェ.jpg

 このオブジェが「奇跡のオブジェ」と言ったのはそういう背景があるのです。これは例えるならフィギアスケートの4回転以上!?みたいなものですね、、、。




007、木のレリーフ時計の制作行程.jpg

 さあ、「光と木目のアート」の制作が始まりました!

 まず、節と節の間の木目が通ったところを取ってゆきます。



008、.jpg

 そして4年目の年輪(中央の年輪幅が狭いところ)の幅が一定になるように削ってゆきます。それが終わったら正方形をできるだけ多く切り出し、


009、バンドソーで切り出す.jpg

 すべてを同じカーブでえぐります。必要な個数25個に対して34個取ることはできましたが、何個が生き残るかはまだわかりません。




010、木目の違い.jpg

 例えばこの2個の年輪を比べると放物線のきつさが違いますでしょう?切った場所によって丸太の断面が微妙に違うというのがこれです!この2個を並べることは出来ません。


011、欠点.jpg


 上は内部割れ、下はシミが出て来てという具合ですでに3個がハネとなりました。


012、ベルトサンダーで仕上げる.jpg

 ベルトサンダーで荒仕上げをし、


013、木のレリーフ.jpg

 年輪の中心を正確に角とした正方形を切り出します。この作業によって成功率が大きく変わってきますから慎重に、、、。


014、切り出し.jpg

 これは失敗例。正方形を右端ぎりぎりに寄せましたが、年輪の中心はもっと右という例です。えぐる前と後で年輪の中心が右にずれたということです。



015、木目のならび.jpg

 途中であきらめそうになりましたが、2時間並べ替え続けてようやく成功。

 やったー!!!

 4回転成功です!

 ちなみに奥のハネの4個を並べてみましょうか?
016、ハネ.jpg

 ね?ぜんぜん合ってないでしょう?



017、面取り.jpg

 ほっとして、一個ずつ最終仕上げに。


018、パーツの接着.jpg

 1ミリの隙間をあけながらベースに接着です。


019、目盛りの彫り込み.jpg

 そして奥の型を使って目盛りの彫り込みをしました。


020、彫り込みの中の木目.jpg

 半球状に彫り込んだその中に出てくる木目の変化も面白みの要素になる狙いがあります。


 さて、いよいよ「光のアート」と言った意味が解ります。










021、光の反射.jpg

 どうですか?向きによってはこんな風に金色?って思えるような反射をしてくれます。これは木の繊維の向きが一個おきに90度振れているから市松状に光るのです。





 そして完成!

022、木のレリーフ時計「頂」.jpg
 今、角から二つ目が光ってますでしょう?これを逆の方向から見ると



 

023、木のレリーフ時計「頂」.jpg

 ほら、今度は角が光る。そして中間の方向から見ると、


024、木のレリーフ時計「頂」.jpg
 均一に反射する。面白い効果でしょう?「光と木目のアート」

026、木の壁掛け時計.jpg

 彫り込みの中に見える木目の変化も一箇所ずつ違います。

027、サーモウッドの木目.jpg

 ほら、ここは細かいでしょう?


 「木のレリーフの壁掛け時計 「頂」  ¥80,000」と公開する予定だったのですけど、なんとこの時計、制作途中で買い手が決まってしまいまして、めでたくお嫁入り。

028、木目の時計.jpg

 最終的にそのお宅の照明具合に合わせてシルバーの針に変更しました。




 「頂」はいただきと読みますが、僕の技、知識、経験の頂点であり地球からの頂き物という両方の意味をこめています。




2014/5/22追記

 可能であれば制作してほしいというご依頼を受け、幸いにも材料が見つかりまた制作することができました。




 木のレリーフ時計 
       ー光と木目のアートー「 頂 」

 
001、木の壁掛け時計「頂」1−1.jpg


 盤面270ミリ角、電波時計のムーブメントを使っています。

002、木の壁掛け時計「頂」1−2.jpg

 杢目の妙と光の市松の反射。

003、木の壁掛け時計「頂」1−3.jpg

(ホコリを払うのを忘れてしまったのはご愛嬌でお許しを)

004、木の壁掛け時計「頂」1−4.jpg

 

 木のレリーフ壁掛け時計「 頂−1 」  ¥80,000

   お買い上げいただきました





003、サーモウッドによる時計.jpg




 盤面160ミリ角の置き時計です。


001、アートな時計「頂」.jpg

 この光の条件ですと4隅と中央が光り

002、木の時計「頂」.jpg

 この向きですと中央4個が光ります。2色の材を使っているのではないのですよ。あくまで同じ板から取ったパーツで同じ色なのに光りを反射する方向が違うから2色に見えるということです。


 木のレリーフ置き時計「 頂−1 」  ¥40,000
 お買い上げいただきました









 作品をご希望の方は青文字のタイトルをメールでお知らせ下さい。

 アドレスは kunimoto-t@lime.plala.or.jp  です。

 ここ数日慌ただしくしております。発送まで少しお時間をいただくやもしれませんことご了承下さい。





 



 

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コメント 20

COLE

一枚目の写真
忘れることができないできないですねぇ
そして新作ですね!
これは魅かれます
by COLE (2013-12-22 18:10) 

青い鳥

制作中に行き先が決まった木のレリーフ時計「頂」、
こんなに素晴らしい作品なのですから当然であろうと思います。
技術の頂点を極めた結果の作品ですものね。
こんなにも素敵な作品を次々に生み出される
kuni様に神様の祝福がありますように。
メリークリスマス!

by 青い鳥 (2013-12-22 19:03) 

トックリヤシ

欲しい!    でも無理か・・・・・・。
by トックリヤシ (2013-12-22 20:29) 

スミッチ

木目は自然のものだけに、真っ直ぐとはいかないですね。上下左右とうねる線にあわせての材料どり
さすがです
by スミッチ (2013-12-22 21:35) 

mipoko

凄いの作ったねぇ~!
美しいねぇ~!
今年も一年ありがとう\(^o^)/
by mipoko (2013-12-22 23:54) 

nobu

市松の時計いいですね。立体感もあり素晴らしいと思います。
by nobu (2013-12-23 01:40) 

みち

美しいです!
きっとすぐに売れてしまうでしょうね^^
by みち (2013-12-23 01:55) 

hatumi30331

またまた素敵な作品が出来ましたね。
ぬくもり感じます。^^
by hatumi30331 (2013-12-23 07:56) 

大竹

二種類の木を使っているのかと思いました…
造形の美しさはもちろん、目の前で、一瞬にして木が表情を変えるなんて、驚きです!
by 大竹 (2013-12-23 19:58) 

KAZUYA

これまた逸品ぞろいの展開ですね~(凄)

まさに光のアート♪とても美しく、素晴らしい
作品です(/^-^)/
by KAZUYA (2013-12-27 12:58) 

TAKESHI

kuniさん!!!
ご無沙汰しておりますっ!!!
とてもとても久しぶりにブログを拝読させて頂きましたが、そこには変わらないどころか、また新たな名作が生まれているじゃありませんか!!!
どんな厳しい状況でも腐らずに我が道を行くkuniさんが健在すると思うと、なんだか嬉しくてテンションが上がっております!!
今年も本当にお疲れ様でした!
来年の作品、心より期待しております!!!!
by TAKESHI (2013-12-27 21:55) 

めりー

kuniさん
今年一年ありがとうございました✿
がんばってこれたのは kuniさんのお祈りのおかげ(^^)
感謝しています✿
by めりー (2013-12-30 22:09) 

hatumi30331

kuniさん 来年も素敵な作品をお願いします。
よいお年をお迎え下さいね。^^
by hatumi30331 (2013-12-31 12:52) 

opas10

今年は、kuniさんの活動のフィールドが随分広がりましたね!来年はもっと弾みがついて本格的な飛翔の年になる予感がします。例年より寒波が厳しいようですが、よいお年をお迎えください!
by opas10 (2013-12-31 14:31) 

青い鳥

新しい年が明けました。
今年こそ良い年にしたいものですね。
kuni様の益々のご活躍を祈っています。
by 青い鳥 (2014-01-01 00:14) 

チェチョンギル

木工を勉強する学生です
失礼ですが使用する3dプログラムが何なのかお聞きしてもいいですか。
by チェチョンギル (2014-03-06 00:35) 

kuni

>チェチョンギルさん、初めまして。3Dソフトはとても古いもので、マックのOS9以下じゃないと動かないinfiniというソフトです。
by kuni (2014-03-06 08:48) 

チェチョンギル

ご回答ありがとうございます。
kuniさんの作品感銘深く見ています。
失礼でなければこれから木工について質問してもいいですか。
by チェチョンギル (2014-03-07 11:37) 

kuni

>チェチョンギルさん、はい、左上にアドレスがありますから、メールを下さい。
by kuni (2014-03-07 12:31) 

engrid

お元気ですか、
春、梅も満開に、
木蓮の咲き始めようとしています
そちらは、まだ雪が残っているようですね
いかがお暮らしですか、、
春のお知らせは、あるでしょうか
by engrid (2014-03-12 21:55) 

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